2006年10月24日09時37分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200610240937182
米人医師は患者とのメール交換に消極的 無報酬が理由のひとつ
情報技術(IT)が社会の隅々までに入り込んでいる米国の医師たちは、意外にも、患者との接触に電子メールを使用したがらないという。メールで患者と交信しても、料金を請求できるシステムが作られておらず、また患者のプライバシー保護の観点から問題があることなどのため、消極的になっているようだ。これに対し、米国人の8割が、電子メールで医師と連絡を取りたいと考えており、電子メールに対する医師と患者の認識の差はかなり大きい。(ベリタ通信=江口惇)
米スクリップス・ハワード・ニュースによると、米国の医師は、日ごろの患者との接触で、今や一般的な通信手段となった電子メールを敬遠している。首都ワシントンにある調査機関「健康システム変化研究センター」の最新の調査では、
電子メールを使用しているのは、医師の4分の1以下だった。
病院での診察なら、患者を診れば必ず医師に報酬が入る。しかし、電子メールの場合は、時間はかかるだけで、収入は得られない。医療保険機関もメールで病気に関する情報を患者に送っても、これを医療行為としてまだ認めていない。
医師によっては、実験的に、電子メールでの医療上の助言に対し料金を徴収しているが、これは患者がどの程度の請求額なら費用を支払うかが不明のため、主流にはなっていない。
システム変化研究センターの研究員アリソン・ライハーバーさんは「料金の問題が、医師が電子メールを使わない最大の障害だ」と指摘する。
▼急激な変化は期待できず
さらに多忙な医師は、電子メールの洪水で、日々の医療活動が一段と忙しくなることを嫌っており、これも患者とのコミュニケーションとしてあまり普及していない要因の一つになっている。
同変化研究センターの上級研究員ジョイ・グロスマンさんは、医師は一般にIT技術の積極的に受け入れる層だが、こと電子メールに関しては、あまり急激な変化は期待できないだろうと予想している。
ハリスインターアクティブ健康ケアの調査では、米国人の8割が、医師と電子メールでのやり取りを希望している。しかし、医師は数年前と比べても、患者にメールで情報を送ることに積極的な姿勢を示していない。
また、米国人がメールの活用を望んでいる半面、電子メールのアカウントをまだ持っていない人も多数いる。特に、高齢者や低額所得者が多く住む地域では、電子メールの普及は遅れている。
ハーバード大学の上級研究員(公衆衛生)キャサリン・デスローチェさんによると、医師が患者とのコミュニケーションの手段としてメール使用に消極的なのは、医師がIT技術を活用していないことではないと話す。実際、薬の処方などでは行っている。
このほか、医師が大きな病院や大学などの機関に属している場合は、一般医らと比べて、電子メールで患者との交流を図る率は高くなっている。
一方、米政府機関では、通信途中で第三者に情報が盗み取られないような安全な形で、医師と患者との交信が進むことを奨励している。特に、医師と症状の重い患者が、メールの交換で情報をやりあうことが可能になることの意義を強調している。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。