2006年10月31日00時52分掲載
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ベトナム系の議員候補者に黒い疑惑 怪文書送り投票妨害?
11月の米議会選挙をめぐり、米カリフォルニア州から出馬している共和党の下院議員候補が、ヒスパニック(中南米系)の有権者が投票するのを妨害するような工作をしていた疑惑が浮上、大きな問題になっている。共和党はこの下院議員に出馬を取りやめるよう勧告したが、拒否された。州司法当局でも、選挙法違反の疑いもあるとして捜査を進めている。(ベリタ通信=江口惇)
疑惑の中心にいるのは、ベトナム系米国人のタン・ニュウィンさん。下院議員選挙は小選挙区制で争われる。民主党現職のロレッタ・サンチェス氏に対抗してオレンジ郡の選挙区から立候補している。
今月、同州オレンジ郡に住むヒスパニック系の名前を持つ人たちを対象にして約1万4000人の怪文書が送られているのが判明した。サンチェスさんは、両親がメキシコ人。米国で生まれ育ったが、いわゆる米国籍を持つ合法的なヒスパニックである。
怪文書を送られた人々はいずれも民主党支持者。サンチェスさんへのヒスパニック票を妨害しようとした可能性が大きい。怪文書は選挙名簿などを見て送付されたみられる。
文面は、不法滞在者と移民は投票に参加すれば、それは連邦犯罪になり、投獄もしくは強制送還されると述べるなど、一種の警告文になっていた。
不法滞在者に投票権がないのは当然だが、移民でも帰化した場合であれば、投票資格を有するので、内容的にも誤解を生むものになっていた。
その後の調べで、手紙はニュウィンさんの選挙運動関係者が送っていたことが判明。ニュウィンさんは直ちに、このスタッフを首にし、自分が知らない間に手紙を送られていたと弁明した。
しかし、印刷代金がニュウィンさんのクレジットカードで払われていたことが判明。共和党のオレンジ郡事務所は関与疑惑が強くなったニュウィンさんに選挙からの離脱を要請した。
シュワルツネッガー州知事も「政治的脅迫による軽蔑すべき行為だ」と批判するともに「やり方は違法であり、ヘイトクライム(憎悪犯罪)に当たる」と指摘した。ヘイトクライムは、人種や民族に対する偏見や差別に基づいた犯罪をいう。
▼元難民が反移民主義に
ニュウィンさんは8歳のときに、ベトナムからやってきた難民の一人。このためサンチェスさんは、同じ移民の出身のものが、こうした怪文書を送った可能性が強まったことで、「きわめて不快」と話している。
今月25日には、ニュウィンさんの選挙事務所や自宅が警察の捜索を受け、コンピューターなどが押収された。ニュウィンさんは元々民主党だったが、共和党に鞍替えし、反移民の姿勢で保守派の票を集めていた。
11月7日の投票を控え、共和、民主両党から立候補取り下げの圧力が強まっているが、本人は「私は無罪。選挙戦を辞退するつもりはない。選挙に勝つ見込みがある」と強気の姿勢を崩していない。
怪文書についても、手紙の内容には間違いはなかったと主張、いったん解雇した選挙運動関係者を再雇用している。
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