2006年10月31日09時08分掲載
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子どもの”鬼ごっこ”は危険と禁止に けがを恐れる学校側
子どもたちが休み時間中に校庭に出て跳ね回るのは、小学校の日常的な風景だ。ところが、米国の小学校では近年、こうした子どもの遊びを規制しようとの動きが出ている。子どもたちが遊んでいる最中にけがでもしたら、損害賠償請求を起こされて大変だとの配慮からだ。10月には米マサチューセッツ州の小学校が、休み時間中のタグ遊び(鬼ごっこ)などを禁止し、親たちの間に波紋を広げている。(ベリタ通信=江田信一郎)
タグ遊びは、米国の小学校の休み時間中に児童たちの間で、一般的に行なわれるゲーム。鬼になったタッガーが、逃げ回る子どもたちを追いかけまわし、相手にタッチすれば、タッチされた者が鬼になり、再び誰かを追いかける伝統的な遊びのひとつ。親たちも、同じ経験をして育っている。
今回、タグ遊びの禁止を打ち出したのは、ボストン南部のアッテルボロ(人口4万5000人)にあるウィレット小学校。さらに、相手にボールをぶつけるドッジボールや、相手にタッチすることがあるキックボールなども禁止された。
同校のPTA(父母と教師の会)や学校側とが話し合い、校長の決断で決まった。理由は、子どものけがは、休み時間中に起きる確率が高いからだ。子どもがけがをした場合、損害賠償を求められることも多く、これを回避する狙いもある。
PTA会長のローリー・ブラジルさんは、地元テレビ局にの取材に対し、「タグ遊びや、他の乱暴な遊びで、子どもたちがアスファルトの上に倒れて、負傷することが大変心配」と話す。
しかし、多くの親たちは、学校の方針は極端だと異論を唱えている。ある児童の祖母は「(過食傾向にある)最近の子どもはエネルギーを発散する必要がある。(方針が)正しいとは思わない」と指摘。その上で「子どもの間に糖尿病が増えている中で、子どもが走り回るのがなぜいけないの」と訴える。
米メディアによると、子どもたちは休み時間中に、遊びをすることで指導者の役割、社会的な人との付き合い方を学んでいくメリットがあるといわれる。しかし、休み時間中の子どもを監視するスタッフの不足などで、事故が起きた後の裁判沙汰を警戒する傾向が、学校の現場で強まっているのも事実だ。
タグ遊びなどは、ワイオミング州やワシントン州(西海岸)の小学校でも最近禁止になっているという。
▼休み時間を減少へ
一方、休み時間中のタグ遊びなどの禁止に加え、米国の小学校では、休み時間そのもののを減らそうとの動きも数年前から顕著になっている。
これは小学校の児童から学力水準の向上が叫ばれるようになったためで、休み時間を教育科目の学習に充てる学校も出現している。
しかし、休み時間を減らすことには親たちから反発も強い。また、代替措置として体育の授業内容を充実すべきとの識者の意見も出されている。
多くの親たちには、小学校時代の休み時間の思い出は鮮明に残っている。そのために自分たちの昔とダブらせて、最近の締め付け教育を嘆く親もが多いようだ。
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