2006年11月02日10時23分掲載  無料記事
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性犯罪者入国にカナダ側が反発 米女学校の元教師を一時拘束

 15歳の女子生徒に対し性的な行為を加えていた私立女学校の元英語(国語)教師が、米ニューヨーク州の裁判所から3年間の保護観察処分を受けた。元教師はカナダ人の妻と子どもがオンタリオに住んでいるため、カナダで3年間を過したいと裁判所に要請。裁判所はこれを認め、元教師は拘置所から釈放され、カナダに向かった。ところが、カナダ国境で、性犯罪者が入国されては困ると、一時拘束される事態になった。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米メディアによると、この男性は同州バッファローにある名門女子私立進学校「バッファロー・セミナリー」で英語(国語)教師をしていたマルコム・ワトソン(35)。 
 
 ことし4月、バッファローにあるショッピングセンターの駐車場の車の中で、15歳の同校生徒とキスをしたり、胸を触っているところを警備員が見つけ、未成年者に性的行為を加えたとして逮捕された。 
 
 ワトソンは逮捕の後、学校を首になった。ワトソンは学校では人気者だった。捜査関係者によると、15歳の女子生徒はワトソンに強く魅かれていた様子だったという。 
 
 「バッファロー・セミナリー」は長い伝統を持つ少人数の女学校で、卒業生はエール、コロンビアなどのほか、名門女子大学に進学している。 
 
 ワトソンは起訴されたが、被害者の生徒の親が、本裁判で自分の娘が証言台に立つのを好まず、このため8月に、検察と被告の間で、司法取引が成立していた。 
 
 司法取引は、被告が有罪を認めれば、本裁判を行なわずに審理を打ち切る制度。一般に量刑も軽くなる。ワトソンには前歴はなかった。10月23日に裁判所は正式に司法取引を認め、ワトソンに対し、3年間の保護観察を言い渡した。 
 
 同時にニューヨーク州の性犯罪者記録簿に「レベル・ワン」の性犯罪者として登録された。レベルは3段階あり、「レベル・ワン」は最も性犯罪者として危険性の低い人物を指すという。 
 
 ワトソンは米国籍だが、カナダ人女性と結婚しているため、カナダの市民権も得ている。ワトソンは裁判所に対し、家族のいるカナダで保護観察期間を過ごしたいと要請し、裁判所もこれを認めた。 
 
 女子生徒はワトソンを依然慕っているようで、両親はワトソンが米国を離れ、カナダへ行くことを歓迎しているという。 
 
 ところが、一部のメディアが、米裁判所の決定について、性犯罪者をカナダへ”島流し“することを決めたと報じたため、カナダ国内で「とんでもないことだ」と、騒ぎが大きくなった。カナダ移民当局も、性犯罪者をカナダに送り込むとはけしからんと怒りの声をあげた。 
 
 こうした中でワトソンは、バッファローとカナダ・フォートエリー間にある国境ピースブリッジから25日入国を果たそうとしたが、性犯罪者の入国ということで逮捕されてしまった。しかし、27日に社会に危害を与える危険性は低いとした釈放された。 
 
 今後、カナダへの入国を認めるかどうかの審理が行われるという。ワトソン問題は、国内政治上の問題にもなっており、ハーパー首相は、性犯罪者がカナダに住むことに不快感を示している。しかし、カナダ国籍を有しているために、政府ができることは限られているとも話している。 


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