2006年11月07日02時22分掲載
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インド系社会で家庭内暴力が深刻に カナダで阻止集会
カナダのブリティッシュコロンビア州にあるインド系カナダ人社会で、家庭内暴力が恒常的に起き、社会問題になりつつある。インド人社会では、女性は、男性に比べて低くみられる傾向があり、夫が妻に暴力を振るったりするケースが目立っている。しかし、インド人家族の間では、家族の恥を外部にさらないのが文化といわれ、暴力を受けた妻が、ひとり耐え忍ぶという事態にもなっている。(ベリタ通信=江田信一郎)
同州サリーで11月2日、インド系カナダ人の被害者や支援者、それに政治家ら1000人が集まって、深刻な問題になっている家庭内暴力の阻止を目指す集会が開かれた。
夫から11年間にわたり精神的、肉体的な暴力を受けたクルディンディール・レハルさんは、集会者に向かって「娘たちを、そして妹たちを救おう。今や、立ち上がる時である」と呼びかけた。レハルさんは、最終的に二人の娘を連れて支援施設に逃げ込んだ。夫はその後、暴力行為で訴追されている。
カナダ・プレスによると、インド人社会では結婚の際には、妻が持参金を持ってくる必要がある。家族の間で、男の子が生まれると、常に歓迎されるが、女子の場合は、必ずしもそうではないという。
集会出席者のジャスウィンダー・ギルさんも家庭内暴力を受けた一人。35年間にわたり暴力を振るわれた。話しながら、ギルさんの体が震えた。夫は現在、半身不随になったため、暴力は止まった。しかし、夫の目は、まだその怖さを秘めているという。
ギルさんは集会で、現在21歳の息子が、数年前に彼女に暴力を振るったことがあったと告白した。「ママを殴るのは良くない」とたしなめると、息子は「だって、パパもあなたを殴ってる」と答えたという。しかし、息子は現在は女性を尊敬する立場に変わっていると、ギルさんは説明している。
インド人社会では、家庭内暴力などは身内の問題とされ、外部の人道支援組織に救済を求めるのをためらわせる傾向がある。捜査当局も、被害者が名乗り挙げれば、夫を逮捕することもできるが、妻が家族内の圧力で、思いとどまりがちだと話している。
10月20日には、40歳の看護婦のインド人女性が、関係が悪くなっていた夫から銃で顔を撃たれ、重体になった。夫はその後、銃で自殺した。夫は当時、家庭内暴力で有罪判決を受けていたが、保釈されていた。
その2日前には、同州サリーで小学校教師で、妊娠4カ月の女性(30)が行方不明になった。5日後には彼女の焼死体が発見された。警察が捜査を進めている。
また、29日にもサリーで、27歳の女性が自宅で、生後4カ月の子どもの前で、夫に刺し殺された。夫は現場で逮捕され、第二級殺人で起訴された。この女性は、故国インドの家族に、夫との関係がうまくいっていないと報告していたという。
03年7月には、父親が娘を刺し殺す事件も起きている。父親は終身刑の判決を受け、服役中だという。
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