2006年11月15日15時54分掲載
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米大学生の間でオンライン受講者が急増 21世紀型の学習方法
情報化時代に波に乗って、米国でオンラインで授業を受ける学生が急増している。自由な時間に自分のペースで勉強ができるメリットがあるのが人気の秘密のようだ。しかし、従来型の学習方法と違い、教官と交流する機会がなく、また自分で勉強のスケジュールを管理するため、長続きしないなどの短所もある。大学当局は中高年者、社会人ら多様な学生が授業を受けられるとして歓迎しているが、学部の教官たちの間からは、オンライン授業の効果について疑問視する声も上がっている。(ベリタ通信=江口惇)
米大学入試委員会(カレッジ・ボード)などが最近公表した調査報告によると、2005年に少なくともオンラインで一つのコースを受講した大学生の数は、約310万人で、一年前の230万人に比べ35%も急増した。310万人という数字は、全学生の17%を占めるという。調査は米国の大学、カレッジの2200校を対象にした。
米メディアによると、米国では学生数は、年に1%程度しか伸びていないため、オンライン授業への関心はひときわ高いといえる。実際、オンライン授業を受ける学生数は02年は160万人だったが、昨年は310万人となり、2倍近く増えた。
オンライン授業を売り物にしている大学もある。米ユタ州ソルトレークシティーを本部とするウェスタン・ガバナーズ大学は完全なオンライン授業だ。19州の知事によって創設された私立大学だが、対象は会社員やキャリアウーマンらを対象にしている。
ビジネス、ヘルスケア、情報技術、教育分野で学士、修士レベルの授業を提供している。年齢層は20歳台から60歳台までと幅広く、平均年齢は40歳台だ。
同校のウエブサイトをみると、学生たちの体験談が乗っている。「自宅で自分のスケジュールで学習ができた。週末や朝、夜など、フレキシブルな形で勉強ができた」「働いている者にとって、大きな機会を与えてくれた」などと書き綴っている。
▼継続性、効果向上などに課題
オンライン授業については、一般に便利さに目が奪われがちだが、学習者が勉学意欲を継続する難しさが指摘されている。具体的な統計は出ていないが、卒業まで至らずにドロップアウトする学生がかなりいると推定されている。
学習の効果についても、教官や他の学生との接触が少なくなる問題点も指摘されている。教官も普通に授業を行なうよりも、手間がかかるといわれる。このため学部の一部の教官の間には、オンライン学習へに抵抗感もある。
公立大学では、オンライン授業に対する学部の支持が低下している。これは私立大学でも同様の傾向が出ている。オンライン授業は、従来のものと違い、学生と直に接触しながら講義をするものではないため、教官に間では、学習効果に関して疑問の声も上がっている。ある学校関係者は「卒業者数を見る限り、オンライン授業が効果を上げているとは、まだ言えないのではないか」と問いかけている。
しかし、各州では、オンライン授業を21世紀の新しい教育、学習モデルとして注目しており、今後さらに広がっていくことが予想されている。
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