2006年11月27日18時03分掲載
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橋本勝21世紀風刺画日記
第24回:戦争で心が壊れないことの異常さ
イラクに派遣され帰国した米兵の多くに異常が出ているという。精神異常、閉じこもり、家庭の崩壊、自殺など…。明らかにイラクの戦場での過酷な体験の後遺症といってよい。いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)といわれるものである。
普通の若者が突然、殺し殺される戦場に放り込まれる。戦友の手足が吹き飛び、内蔵がはみ出る無惨な死。常に自分も狙われているという疑心暗鬼から、子どもを殺してしまい、その罪の意識にさいなまれる。それに戦争の大義さえあやふやとなり、助けているはずのイラク市民から憎しみの視線を浴びる。そんな戦場での日々を送り、無事に帰還したことしても、普段の生活にスンナリ戻れないのは当然ではないか。
帰還した兵士の何%くらいがPTSDになるのかは、はっきりした数字は確かではありません。しかし本当に恐ろしいというか、問題なのは、ほとんどの兵士がPTSDになることもなく市民生活に戻っていくことではないか。彼らは死の恐怖にさいなまれたことも、人を殺したことも(その中には誤って殺したことも、さらに強姦などの非人間的な行為をしたこともあるかもしれない)心の奥底にしまいこみ生きてゆくのである。
もし帰還兵のたとえば半分以上がPTSDになるようなことになれば、国家は戦争などできなくなる。戦争とはどんな理由をつけようと、普通の人間の殺し合いを強いる異常なものだ。人間ならばPTSDになることこそ、健全な精神の持ち主ではないかと思えるのである。(橋本勝)
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