2006年11月28日00時10分掲載  無料記事
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自宅で産んだ子を運河に投棄 当時17歳の少女に保護観察3年

 2001年4月に米フロリダ州南東部のタマラック市で17歳の少女が、自宅で子どもを産んだ。少女は妊娠を秘密にしていた。その子どもを少女はバックパックの中に入れ、自宅裏の運河に投げて捨てた。少女は殺人罪で起訴され、有罪になれば、最高で終身刑になるところだったが、裁判ではこのほど、保護観察3年という軽い刑が宣告された。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 少女は現在23歳になっている。米メディアによると、エイミー・リー・ワイス被告で、01年4月に第一級殺人罪(計画殺人)で逮捕された。長い金髪が特徴のワイスは、裁判では、子どもを産んだとき、子どもは既に死亡していたとし、殺人を否認した。 
 
 ワイスは自宅のトイレで男の子を産んだ。その後、赤ん坊の頭にプラスチックの袋をかぶせ、さらに赤ん坊の首の周りに下着のパンティーを巻きつけ、通学用のバックパックの中で、赤ん坊が宙釣りになるようにして押し込んだ。 
 
 バックパックは運河に投げ捨てたが、沈まず浮上してきたため、いったんすくい上げた後、重しをつけて再び沈めた。数日後に魚釣りに来ていた少年が腐敗した赤ん坊の死体を発見した。 
 
 検察側は、赤ん坊の首に縛られた跡があり、また首にはパンティーが巻かれていたとの状況証拠から、ワイスを殺人の容疑者と断定した。しかし、ワイスは裁判では、子どもは死産で、遺体を運河に捨てたと主張した。 
 
 このため検視官が裁判に出廷した。しかし、生まれた時、子どもが生きていたのか、それとも死んでいたのかは判断できないと証言した。出産の状況を知っているのは、ワイスしかおらず、検察側は立証に苦慮した。 
 
 さらに検察側にとっては、手痛いミスも明らかになった。刑事が01年4月に、ワイスを逮捕した際、ワイスに対し「ミランダ警告」を正確に告げていなかったことが明らかになったからだ。 
 
 「ミランダ警告」とは、刑事や警官が逮捕の際、容疑者に対し「あなたには黙秘権がある」「あなたには、尋問に際し、弁護士の立会いを求める権利がある」などと、容疑者の権利を声をあげて告知する内容のこと。「ミランダ警告」が正確に告知されていないと、裁判になっても、その後の供述は証拠とみなされなくなる。 
 
 ワイスは取り調べに対し、犯行を認めていた。しかし、逮捕した刑事が当時、「弁護士の立会いを求める権利がある」と明確に告げていなかったことが分かり、ことし8月には、別の裁判所が、ワイスの供述は証拠としては使えないとの決定を下していた。 
 
 この結果、検察側は第一級殺人罪を取り下げ、より軽い故殺(一時的な激情による殺人)の罪に変更するとともに、司法取引で裁判を打ち切ることで弁護側と合意していた。合意では保護観察5年の予定だったが、判事は11月16日、保護観察3年の刑を言い渡した。 
 
 ワイスは現在仕事に就いている。弁護士の話では、本人は結果が出てほっとしていると話している。保護観察中に不祥事を起こせば、禁固15年の刑が科されるという。 


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