2006年11月28日00時21分掲載
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テロ警戒で米国人にも旅券義務付け 当初は空だけ
米国人が隣国のカナダやメキシコなどを訪問し、空の表玄関を使って米国に再入国する場合、これまでは運転免許証の提示などでOKだった。しかし、テロリストがこうした制度を悪用して米国に入国するのを警戒し、米国人に対しても、07年1月23日から、空港でのパスポート提示が義務付けられることになった。周辺諸国の間では、旅券保持が義務付けられたことで、米国人観光客が減少するのではと警戒している。(ベリタ通信=江田信一郎)
米国では2001年の9・11同時多発テロ事件の後、海空陸の入国地点でのチェックの強化が叫ばれた。今回の措置は、米国人にも旅券保持を義務付ける「西半球旅行イニシアチブ」(WHTI)としてブッシュ政権が提唱していた。
その第一弾が、飛行機を使ってカナダやメキシコから再入国する米国人に旅券の保持を義務付けるもの。ただし、米領プエルトリコや米領バージン諸島などは旅券保持の義務付けが免除される。しかし、旅行会社では、海外に出る場合は、用心のために旅券を携帯するほうが無難とアドバイスしている。
外国には、空のほかにも、現在は海や陸を使っても行ける。陸路カナダやメキシコに短期間行き、再入国する場合は、米国人なら国境通過地点で運転免許証を提示すればOKだ。例えば、米カリフォルニア州南部から国境に近いメキシコのティフアナへは、米国ナンバーの車を運転しても行けるし、歩いてでも行ける。再入国は、そのまま再び戻ってくればいいわけだ。
しかし、海や陸も08年1月から米国人でも旅券の携帯が必要になる。長年、旅券なしでカナダやメキシコへ旅行していた米国人にとっては、新措置は、かなり厄介に感じるようだ。テキサス州出身のブッシュ大統領も05年に、米政府が米国人の旅券義務付けの計画を公表していたのにもかかわらず、旅券携帯を見直す発言をするなど、国境周辺に住んだ経験のある人には、あまり歓迎されない提案であることを浮き彫りにしていた。
▼テロ対策を強調
新措置を発表した国土安全保障省のチェルトフ長官はこのほど、旅券を義務付けなければ、テロリストに米国へのドアを開放することになると警告し、次の米国でのテロを阻止する一環であることを強調した。
現在旅券を持っている米国人は全人口の4分の1程度といわれる。そのうち、実際に旅券を使っている人は、その半分程度。しかし、年末の海外旅行シーズンを迎え、旅券の発給を求める人が急増しているという。旅券の発行には合計で97ドルがかかる。
これに対し、人や物の流れが阻害される恐れがあるとして、カナダのブリティッシュ・コロンビア州と国境を接しているワシントン州(西海岸)では、従来通り運転免許証を使用する目的で、データを読み取るスキャン装置の試験的導入を連邦政府に要請している。試験がうまく行けば、国境を旅券を携帯しないで通過できるとの思惑からだ。
米国人観光客に依存しているカリブ海沿岸国では、米国人の旅券携帯義務は、米国人に対し海外旅行より、国内にとどまるのがましといった感情を呼び起こすと警戒している。事実、カナダやメキシコに頻繁に通っている人には、家族全員の旅券をそろえる必要があるため、旅行を躊躇する事態も起きると予想されている。
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