2006年11月29日13時18分掲載
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正則アラビア語での電子コーラン学習が外来語蔓延に一石投じる? アラブ近代化の明暗
アラブ世界でも外来語が蔓延、難解とされるアラビア語の乱れが進行し アラブ人の研究者やメディア関係者らは、近年教育カリキュラムやメディアでアラビア語が徐々に後退していると警鐘を鳴らしている。一方、コーラン朗誦法などイスラム学習には電子化の波が押し寄せている。10億人以上のイスラム教徒対象の巨大成長ビジネスに、中国を含む世界の投資家たちが巨利を求めて殺到、競争が加熱しているが、正則アラビア語を非イスラム圏にまで普及するメリットを指摘する向きもある。ミドル・イースト・オンラインがこのほど報じた。(斉藤力二朗)
アラブ連盟メディア委員会のアミーン・バスユーニー委員長は21日、「テレビドラマや歌謡曲で正則アラビア語が使用される割合が大きく低下する一方で、日常会話や報道番組の司会者の言葉に英語が増えている」と憂慮。つい最近まで人々は「詩人たちの長」と呼ばれたアフマド・シャウキーらの作詞によるエジプト人女性歌手ウンム・クルスームの歌を口ずさんでいたのだから、学習すれば正則アラビア語を理解できると指摘した。
エジプト・カイロのアラブ連盟本部で行なわれた会議「アラブ世界でのアラビア語の現状」の席上、同委員長は、「かつて高校生は上級専攻科目として古典詩華集を学んでいたが、今やカリキュラムから消え去った」と嘆いた。
また、同会議でエジプト人研究者は「民族語の西洋化」に与える影響を警告、使用されている外来語の本来の意味と同意のアラビア語の言葉を探すよう呼び掛けた。さらに、サウジアラビア人研究者は、すべての大学や大学院、技術学校で英語授業が行われているペルシア湾岸諸国は「危険な変化」にあると語り、この状態が継続すれば、教育言語や共同体のアイデンティティーの危機が訪れると危機感を訴えた。
▼電子コーラン学習で補う
一方、コーラン朗誦法などイスラム学習の電子化が巨大ビジネスになると投資が殺到している。カイロ大学電子通信学部のムフスィン・ラシュワーン教授は25日までドバイで開かれていた情報技術(IT)展示会「ジーテックス」で記者会見し「我々は正確なコーラン朗誦法の学習プログラム開発に巨額の投資をした」と語った。
これまでイスラム教徒はコーランに熟達しているシャイフ(指導者)に教えを請うか、モスクの寺子屋式学習会に通ってコーラン朗誦法を学んできた。プログラムはまず学習者に希望するコーランの箇所のアラビア語の正則な発音を教え、正しい方法で朗誦出来る理想的な方法に導く。同教授は「非イスラム国のイスラム教徒は子弟にコーラン朗誦法を教えるためにこのプログラムを待ち望んでいる」と強調した。
利益の追求心が宗教電子機器の製造業者を急増させ、業者が過当競争に陥っているとの非難がある。だが、電子機器は信者にコーランを正則アラビア語で朗唱させ得る。また、製品が世界に向けイスラムの真の姿を紹介できるとの前向きな意見もある。アラビア語が英語の蔓延で乱れる中、電子学習は貴重な補助的役割を果たしそうだ。
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