2006年12月05日01時38分掲載  無料記事
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ピッチでの「戦士の踊り」なくても大勝 英でNZラグビーチーム

 ラグビー王国、ニュージーランド(NZ)のナショナルチーム「オールブラックス」の象徴は、文字通り、「黒色」の上下ジャージーと試合開始直前に必ず披露する、選手たちによる勇壮な「戦士の踊り」、いわゆるハカだ。ところが、11月26日、英ウェールズで行われた国際試合(テストマッチ)で、オールブラックスがこの「ハカ」を演じないまま試合を開始する、異例の事態が起きた。ウェールズ側が「ハカ」披露の順番を従来の試合直前と異なり、両チーム国歌演奏の間に挟むよう要請。これをNZ側が拒否し、「ハカ」をピッチ登場前の更衣室で行ったからだ。敵、味方を問わず、ラグビーファンが楽しみにする「ハカ」。それだけに、来年9月の第6回ラグビー・ワールドカップ(フランス)を控え、今後、この事態がどのように収拾されるかが大いに気になるところだ。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 「カマテ、カマテ……」。黒色のジャージーに身を包んだ、屈強の男たちが約1分間にわたって、目を大きく見開き、腕を、ももをたたきながら、こう叫び、最後に飛び上がって相手チームを「威嚇(いかく)」する。 
 
 NZの先住民、マオリ族に伝わる戦士たちによる戦い前の儀式だ。これにより自らを鼓舞し、相手の戦意を削ぐことを狙ったものだ。戦いがなくなった今、この勇ましい伝統を引き継いでいるのがNZのフィフティーン、オールブラックスなのだ。 
 
 「ハカ」がラグビー試合に初めて登場したのは1905年、NZナショナルチームがウェールズ(英本島南西部の半島地域)チームと対戦した時だったという。今回の異例の事態は、この時に披露された「ハカ」が伏線となっている。ちなみに、NZナショナルチームが今の愛称「オールブラックス」と呼ばれるようになったのも、この試合以降とされる。 
 
 NZの地元紙ドミニオン・ポスト(27日付電子版)によると、ウェールズの主要都市カーディフで行われた今回のテストマッチを迎えるに当たり、ウェールズ・ラグビー連盟(WRU)が「ハカ」を行う順番で、オールブラックス側にちょっとした注文を付けた。 
 
 WRUからの要請は「ハカをNZ国歌演奏直後に披露する」で、その理由としてWRUは「1905年には『ハカ』は国歌演奏に続いて行われ、昨年の試合でもこれを踏襲した」を挙げてきた。WRU側の意図は「ハカ」をNZ国歌とウェールズ(国)歌の間に挟むことで、「ハカ」の“威圧”を減じるとともに、自陣側の(国)歌で最高潮に達した雰囲気の中で試合入りしたいというもの。 
 
 これに対し、当然、グラハム・ヘンリー監督率いるオールブラックスが「昨年は『100周年記念』だったため、最初の例を受け入れたまでだ」と猛然と抗議、異議を唱えた。「ハカ」は現在、両チームの国歌演奏を終えた後、つまり、主審の笛が鳴る直前に行うのが“定着”しているからだ。 
 
 納得できなかったオールブラックスがそこでとった手段が、ピッチ登場前の更衣室内で「ハカ」を行い、チームの士気を高めることだった。 
 
▼ウエールズファンもブーイング 
 
 しかし、いかに強豪の敵チームとはいえ、ウェールズファンの中にも勇壮な「ハカ」を楽しみに会場へやって来た者も多く、「ハカ」なしでの試合開始には、詰め掛けた7万4000人の観客の中から大きなブーイングがわき起こった。 
 
 試合は、この「ハカ」騒動とはかかわりなく、オールブラックスがウェールズを終始圧倒し、結局、45−10の大差で勝利を収めた。と同時に、オールブラックスは今回の英国遠征を無敗で終える強さをみせた。 
 
 試合後、ヘンリー監督は「このような事態は2度とあってはならない」と、快勝の余韻を楽しむどころか、怒りをあらわにし、同時に、「『ハカ』なしでファンはがっかりしたと思うか」との記者の質問には、「『ハカ』はファンや観客のためにではなく、わが国のラグビー、そして選手たちのために行うものだ」と答え、更衣室での「ハカ」でもその効果は変わりないとの考えを示していた。 
 
 オールブラックスの強さを示す1例としては、1995年、南アフリカで開催された第3回W杯予選リーグでの出来事が挙げられる。オールブラックスと対戦した日本チームは、横綱と序の口ほどの「格の違い」を見せつけられ、何と17−145という歴史的な大敗を喫した。 
 
 その日本は最近、韓国を破り、アジア代表として来年のフランスW杯への出場を決めたものの、2011年の第7回W杯開催地選定をめぐってはNZに苦杯をなめた。 


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