2006年12月05日13時28分掲載
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バグダード西域はシリア経済圏へ 輸送困難でダマスカスの方が近い
治安悪化で都市間の移動、輸送が困難なイラクはタコツボ状態に向かっている。イラクのファッルージャの住民には東に50キロ先のバグダードよりも900キロ離れたシリアの首都ダマスカスの方が近くになっており、バグダードから西部地域はシリア経済圏に組み込まれつつある。2日付のミドル・イースト・オンラインが報じた。(斉藤力二朗)
バグダードで深刻化する戦禍が理由で、ファッルージャの住民たちは地理的に遠いシリアの首都ダマスカスの方が時間的には自国の首都より近いと語る。
ファッルージャの商人ムハンマド・ジヤードさんは、「ダマスカスはバグダードへ行くより明らかに大変ですが、ファッルージャとその周辺の住民だけでなく、バグダード郊外に住む人々の多くにとってはダマスカスの方が近い。一年前からバグダードは夢のまた夢、バミューダ・トライアングルのようなものになってしまった」と、船舶が突然消える大西洋の地点を引き合いに出して語った。
数十人が犠牲となったジハード地区(バグダード西部)で7月に起きた事件や、高速道路上に設けられた多数の検問所など治安上の要因によって、バグダードから西方地域の住民の大部分はバグダードに入れなくなっている。
加えて様々な目的で起こされる戦闘、暴力の噂や実情が伝わっていることから、道中の困難や危険、長い道程(900キロ)にもかかわらず、同地域の住民をシリアへと向かわせている。
ハーディー・ジャースィムさんは「息子は放射線治療が必要で定期的にバグダードの病院へ通っていたが、ある日病院の女性職員がもう来ないよう忠告した。診療日になったが、状況が改善するのを待つしかなかった。
そのうち息子の病状が急変したので、ファッルージャの近くにあるヨルダン野戦病院に連れて行くと、アンマンへ行くように言われた。だが国境で入国を拒否されたためシリアへ向かった。イラク国内よりはるかに治療費も高く旅費も掛かるがシリアで治療を受けることにした」と苦悩を語った。ジャースィムさんの他にも、治療や検診、手術を受けるために多くの患者がシリアへ行っている。
▼物資輸入協定を締結
さらに、ファッルージャの卸商人たちは最近、小売店に必要な商品を供給するために、物資をバグダードで購入する代わりにシリアから共同で直接輸入するようになった。ジヤードさんは、「危険があるためバグダードからの商品が途絶えて以来、商人たちは時折シリアから大型トラックに商品を輸入する協定を結び、ファッルージャは周辺地域にとっての物資集積地になった。バグダードの大規模な商業地を必要としなくなった」と説明する。
加えて、商人たちはシリアやヨルダンからの商品をアブー・グレイブとガザーリーヤ(バグダード西部)の間の孤立した地域で交換している。匿名のトラック運転手は、「孤立地域への輸送を特定の運転手が請負い、更にそこから別の運転手がバグダードの市場に向かうためにバグダードに運ぶ協定を数人の商人が結んでいる」と明かす。
イラク人の運転手たちは特定の宗派に属しており輸送を継続出来ないため、現地の労働者による手積みやフォークリフトを使って積み替えて、別の運転手が積荷の輸送を続けている。
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