2006年12月20日15時54分掲載
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米教師は教室内で銃武装する時代に 生徒の銃持ち込み多発
学校に生徒が銃を持ち込むケースが全米各地で起きている。学校では金属探知機や、監視カメラを構内に設置しているが、完ぺきに構内への銃器の持ち込みを防ぐのは困難なようだ。米ネバダ州では、州上院議員が、生徒の銃の持ち込みに対抗するため、校長や教師、それにスクールバスの運転手らも銃で武装すべきだと提案している。銃の所有が憲法で保障されている米国では、銃乱射事件が起きても銃規制の声はあまり高まらない。今回の州上院議員の提案も、銃の規制ではなく、むしろ銃には銃で対抗すべきだとの力の論理だ。(ベリタ通信=江口惇)
米ペンシルベニア州で12日、高校2年のシェーン・ハリガン君(16)が、自宅から父親が保管していたライフル銃と弾丸を無断で持ち出し、学校に出席した。一時間目が終了した直後、バッグに入れていたライフルを取り出し、教室や廊下の天井めがけて発砲した。
そばにいた生徒たちは一斉に逃げ出した。ハリガン君はその後、廊下に出てライフルで頭を撃ち抜いて自殺した。ハリガン君は、将来軍隊に入る予定で、ボランティアの消防活動に参加するなど、課外活動に熱心だった。しかし、11日に届いた学校からの成績表は、ハリガン君の成績が低下していることを示していた。
このため両親は、課外活動を抑えて学校の成績を上げるようハリガン君を諭した。ハリガン君は12日朝食を取った後、父親が施錠していた場所からライフル銃を取り出し、そして自らの命を絶った。学校関係者は、最も人生で大切に考えていた課外活動を制限されたのが原因だとみている。
ネバダ州ラスベガスでも同日、エルドラド高校で生徒が散弾銃を持ち込み、逮捕された。2日後の14日には、ラスベガスのスプリングバレー高校から、「911」(警察・消防)に、生徒が銃を持ち込んだとの通報があった。警官隊が、学校に突入したが、持ち込んだのは空気銃とわかり、一安心させた。
この間、ネバダ州のボブ・ビアーズ州上院議員が、教師が教室内で、銃を携行を許されるべきだとの提案をした。通常、学校内では、銃の持ち込みは法律上禁止されている。
▼警官並みの訓練必要
提案の趣旨は、銃が構内に持ち込まれた場合、監視カメラで犯人像が映し出され、警察に連絡したとしても、その間に犯人が銃を発砲したら、多くの生徒が死亡してしまう。それを食い止めるためには、校長や教師、それにスクールバスの運転手が銃を携行し、対抗すべきだとの論理だ。当然、銃を携帯する以上、警官並みの銃の訓練が必要だと指摘している。
同議員によると、イスラエルでは、教師が銃で武装してから、構内で銃による事件が発生していないという。つまり教職員の銃携帯は、抑止効果があるのと主張だ。
しかし、教職員の銃武装化を支持する声は、必ずしも主流にはなっていない。ネバダ州クラーク郡学校区警察本部のヘクター・ガルシア本部長は、イスラエルでの現地訓練を終え、帰国しかばかりだが、イスラエルでは元軍人が銃を携帯しており、必ずしも米国に適用できないと反論している。
同本部長は、銃の管理などで難しい問題があり、また教師が銃を使った場合、後で到着した警官隊が、誰が犯人かをめぐり混乱する事態が起きかねず、むしろ危険だとしている。その上で生徒が一番安全なのは、学校内の銃持ち込みを禁止することだと指摘する。
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