2006年12月28日12時49分掲載  無料記事
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マレーシアでVIP宅への家宅侵入相次ぐ

 【クアラルンプール27日=和田等】2006年に入ってからマレーシアの富裕層の自宅に窃盗犯が侵入し、金品を奪う事件が相次いでいる。25日深夜から26日未明にかけてクアラルンプール(KL)にある大手不動産開発会社、グロマックのファテ・イスカンダル・グループ社長の自宅に空き巣が入り、6万リンギ相当(200万円弱)の金品を奪って逃走したのは最近の事件の一例だ。泥棒が入ったとき、ファテ社長は寝ていて気づかなかった。家宅侵入事件後、ファテ社長の家で働いていたメードが行方不明になっている。英字紙スターが報じた。 
 
 ファテ社長はKL市内のブリックフィールズ警察署に被害届を提出した。 
 
 06年に泥棒に入られたVIPは、ファテ社長が9人目。このほかの被害者にはサイド・ハミド外相、KLモノレール・システムのアーマド・レジャル・アルビー取締役、セランゴール州ウル・ランガ選挙区選出のマルキマン・コビラン国会議員、アブドゥル・ラーマン・イスマイル元警察庁副長官、リー・シンチューイ上院議員、ユソフ・ザイナル・アビデン検察庁起訴課課長、空港運営会社マレーシア・エアポーツ・ホールディングスのマハ・サマ法人企画担当上級GM、ザイナル・アビディン・ノルディン元土地・協同組合開発省事務次官、エフェンディ・ノルワウィ首相府相がいる。 
 
 
▼日系団体も何らかの働きかけを 
 
 マレーシア在住日本人の間でも今年、家宅侵入の被害に遭った事件が少なくない。日本政府の外郭団体の事務所やKL市内の高級コンドミニアムの日本人駐在員宅も被害にあい、コンピューターや貴金属類を奪われている。しかし、犯人が逮捕される例は稀だ。 
 
 12月中旬に家宅侵入の被害を受けた日本人駐在員によれば、被害届を提出した際に警察は「コンドミニアムの警備の問題」だとして冷たく突き放したような対応をしたと主張、不満を表明した。この事件では、コロンビア人ひとりはが逃走中に逮捕されたが、共犯者は逃亡し、まだ捕まっていない。警察のこれまでの捜査では、容疑者がシンガポール、フィリピンを経てマレーシアに入国後5日目に犯行をおこなったことが判明している。また警察では10人以上のコロンビア人グループが窃盗団を形成、マレーシアへの出入国を繰り返して犯罪を重ねていたとみているが、残りの構成員の行方はわかっていない。 
 
 またこの事件では、家宅侵入犯が部屋を荒らしている際に駐在員の妻と子どもが帰宅、逃げようとした犯人に押し倒されて軽傷を負った。そのため妻と子どもは恐怖心に事件後に包まれ、「もうこの場所にはいたくない」と主張したので、実家に送り返さざるを得なかったという。 
 
 2カ月ほど前にマレーシアに再赴任したというこの駐在員は「10年ほど前まで3年ほどマレーシアに滞在した経験があるので、マレーシアはほかの東南アジア諸国と比較して安全だと思っていた。しかし、10年経って環境が変わってしまったようだ。治安状況は着実に悪くなっているように映る。確かに治安状況を楽観していた自分の側にも警戒心の欠如という落ち度はあったかもしれないが、まさか白昼堂々、警備員のいるコンドミアムで家宅侵入を受けるとは思っていなかった」との心情を吐露した。 
 
 「治安が悪くなれば、外国からの投資も来なくなる。2007年にはマレーシア訪問年を迎える中、外国人滞在者の安全を保証できなければ、観光客の誘致もままならない。こうした点を踏まえて、マレーシア在住外国人が治安に対する懸念を抱いているとの意思表示をおこなう意味でも日本人会やマレーシア日本人商工会議所などの日系団体は、マレーシアの政府当局に在住外国人の間で治安に対する懸念が高まっているので、何らかの対策をうってほしいとの申し入れをするなどの対応をしてほしい」との要望を表明している。 


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