2007年01月09日08時17分掲載
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目をえぐり殺害し遺体を棄てる ハイチで凶悪誘拐事件が多発
政情不安が続くハイチ(人口830万人)で、誘拐が多発している。最近起きたケースでは、家族が子どもの身代金を払ったものの、人質を帰さず、殺害するという残酷なものだった。2004年2月にアリスティド大統領が事実上のクーデターで出国し、その後国連の平和維持部隊が、治安の維持を図るために派遣されたが、治安は悪化している。(ベリタ通信=江口惇)
06年11月、首都ポルトープランス郊外で20歳の女性の遺体が発見された。誘拐され、犯人側と解放交渉が行なわれていた女性だった。両目がえぐられ、数発の銃弾が撃ち込まれていた。指の二本は折れていた。
女性はポルトープランスにある教員養成の大学の学生だった。米メディアによると、誘拐犯と母親との接触は次のようにして始まった。母親が娘の携帯に電話をかけた。呼び出し音が続いたが、誰も電話口に出なかった。再びダイアルをした。今度はつながった。電話口から聞こえてきたのは、男の声だった。
母親が恐る恐る「これはナターシャの電話ではないか」と尋ねた。男は「そうだが、ナターシャはトラブルに巻き込まれた。誘拐された」と告げた。そして電話は切れた。
犯人側は身代金を要求したが、母親は失業中で、金はない。ようやく親戚や友人に頼み込んで、500ドルを集め、犯人側の要求どおりに支払った。母親は、誘拐犯が、娘を殺さずに返してくれるだろうと考えた。しかし、考えが甘かった。その後、ごみが堆積している場所に遺棄されていた死体が発見された。
誘拐犯の見当はつかず、怒った弔問客が、大統領宮殿前まで押しかけ、誘拐事件の多発に何らかの対策を講じるべきだと怒りの声を挙げた。12月に容疑者が拘束されたが、娘を失った母親にとっては慰めにならない。息子とともにハイチを出国することを検討している。
この事件の後、警察は11月に誘拐されていた6歳の少年の絞殺死体が見つかったと公表した。両親は身代金を支払っていた。犯人はお抱え運転手の犯行だった。12月13日には、7人の子どもが乗ったスクールバスがハイジャックされる事件が起きたが、これは家族が身代金を払ったため解放された。
国連児童基金(ユニセフ)のハイチ事務所では、子どもたちは誘拐の多発におびえており、子どもの将来のためにも望ましい状態ではないと憂慮している。ハイチは、人口830万のうち、49%が18歳以下という若い国で、経済は困窮している。世界でも有数の最貧国で、金を得るのに手っ取り早い誘拐が、今後も多発する恐れがある。
同基金によると、11月以来、48人の若者が誘拐されたという。しかし、家族が子どもの誘拐を届け出ないことも多く、実際はもっと多いとみられている。
こうした傾向に業を煮やした市民の間からは、誘拐犯が見つかったら、現場で殺害せよとの声や、議会関係者からは、憲法で禁止されている死刑の復活を求める声も上がっている。
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