2007年01月10日11時29分掲載
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米女子高生の銃を構えた姿が問題に バスケチームの宣伝用ポスター回収
米アイオワ州で高校の女子バスケットチームが最近、チーム宣伝用のポスターを作製した。しかし、女子10人がプラスチック製の銃を構えているデザインをめぐり、校長が「不適切だ」と判断したため、ポスターが回収される事態になった。米国では、銃の所有が憲法上の権利になっており、銃による犯罪は毎日のように起きている。警官と犯人との銃撃戦は日常的に起き、時折、テレビ画面でも撃ち合いのシーンは公開される。それだけ銃が氾濫している社会だが、学校の銃に対する姿勢は厳しいようだ。(ベリタ通信=江口惇)
この高校は、同州デモイン市にあるリンカーン高校。ここの女子バスケットチーム「レイルスプリッターズ」が、チーム宣伝用のポスターを作った。毎年作られるもので、普通ならなんの問題も起きない。しかし、ことしは様子が違った。
ポスターは、トム・クルーズ出演でハリウッド映画の人気シリーズになっている「ミッション・インポッシビル」のアイディアを借りて作った。「ミッション・インポッシブル」という大きな、赤いアルファベットの文字の周りに、サイズが縮小された女子バスケット部の10人の正選手が、映画の主人公と同じように、黒っぽい服を着て、ポーズを取っている。
遠くから見ると、女性の姿が小さいので、よくわからないが、近づくと、女子全員が、様々なポーズで、プラスチック製の拳銃を構えている。これを見たアル・グラジアノ校長が、「学校で暴力や銃撃事件が起きている環境の中で、ポスターの内容は不適切だ」とクレームをつけたのが発端だ。
同校長は「女子生徒がエージェントのような格好をしている所までは、何ら問題はない。しかし、銃を持ち、構えるポーズを取れば、これは好ましくない」と指摘する。
同校では、生徒が銃を持ち込めば、直ちに退学処分となる「ゼロ・トレランス(ゼロ容認)」という厳しい措置を掲げている。ポスターは、銃に対して学校側が寛容な印象を与えるために、校長が問題視したようだ。
米国の高校などでは毎年、銃による発砲事件が起きており、学校関係者も神経質になっている。今年に入っても、米ワシントン州タコマの高校では3日に、校内でカンボジア出身の高校生が級友に銃で撃たれ、死亡するという事件が起きている。
校長が異議を唱えたため、既に配布された300枚が回収されることになった。ポスターは、生徒が足繁く通うレストラン「ボーデネーロ」の経営者が、スポンサーになって作った。ポスターの右側には、協賛の企業名がずらりと並んでいる。
ポスターが使用できなくなった場合、チームは企業から徴収した宣伝費を返還する必要があるという。コーチや生徒のポスター作りでは、1200ドルの費用がかかっているが、これは回収できなくなる可能性もある。
ポスターで女子選手が構えているのはおもちゃの銃だけに、校長の反応は過剰反応だとの声もある。同校の女子生徒たちは、テレビ局のインタビューに答えて、「銃はおもちゃであり、暴力を助長しない。ポスターは面白いと思う」と話している。
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