2007年01月15日00時54分掲載  無料記事
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名門私大の教授を妻殺害で逮捕 本人は無実を主張

 昨年12月のクリスマスを前に、名門私立ペンシルベニア大学の教授夫人が自宅で殺害された。検察当局はことし1月3日に記者会見し、夫のラファエル・ロッブ教授(56)を有力参考人として捜査していることを明らかにした。夫人の第一発見者であるロッブ教授の証言には矛盾する点が多く、アリバイもないと主張。そうした中で検察は8日に同教授を殺人罪などで逮捕、起訴した。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 ペンシルベニア大学は、ハーバード大学などと並ぶアイビーリーグ(米北東部の名門8大学)の一つ。ロッブ教授はイスラエル出身で、1981年に米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)で経済学博士号を取得している。「ゲーム理論」が専門で、ペンシルベニア大学では4年前から経済学を教えている。 
 
 事件発生は、12月22日。ロッブ教授が同日午後、帰宅したところ、台所の床に血まみれになって死亡している妻エレンさん(46)を発見した。一家は教授夫妻と、12歳の娘の3人暮らしで、他に犬の「コッパー」が飼われていた。 
 
 警察は当初、血まみれのエレンさんを見て、至近距離から散弾銃のようなもので撃たれたと推定したが、解剖の結果、頭部を棍棒のようなもので滅多打ちにされたのが原因と断定した。殴打は、不意打ちのような状態で行なわれた。自宅のドアのガラスが割られており、強盗の犯行と思われた。 
 
 しかし、捜査当局は、ロッブ教授から事情を聴いているうちに、証言に矛盾があるのに気づいた。教授は妻を発見した後、直ちに「911」(警察・消防)しなかった。また警察に通報した際、「(妻の)頭が割られている」と話した。当時は、まだ解剖も行なわれておらず、死因が不明な段階。それにもかかわらず、教授は「頭が割られている」と、犯人でなければわからないような事実を警察に告げていた。 
 
 また割られていたドアのガラスは、外部から犯人が侵入しているならば、床に散乱したガラスが靴で踏み割られているはずなのに、その形跡がなかった。自宅内には「コッパー」がいたが、犬が吠え立てたような様子もなかった。このため、犯行を強盗にみせかけようとした疑いが強くなった。 
 
 その後、エレンさんの友人や近所の人の証言から、教授夫妻に離婚話があったことが明らかになった。既に弁護士が離婚手続きをすすめていた。数年前から夫婦の寝室も別々だった。エレンさんは、1月には月1500ドルのアパートに移る予定になっていた。詳しい詳細は不明だが、エレンさんは教授から月4000ドルを受け取ることになっていたという。 
 
 このため捜査当局は、金銭的な問題から、行き詰ったロッブ教授が凶行に走ったと推定している。これに対し、ロッブ教授は無実を主張し、3日にはDNA検査のため、指紋などの標本を提出している。 
 
 検察当局は「ロッブ教授は、大変頭がよく、我々を間違った方向に向けようとしたが、(事件に関しては)素人だ。しかし我々は素人ではない」と話している。 
 
 ペンシルベニア大学では8日から新学期が始まるが、ロッブ教授の授業は、別の教官が行なうという。 


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