2007年01月21日03時12分掲載  無料記事
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メディアの過激な暴力描写に反対 カナダの教育・保護者グループ

 子どもたちがテレビ、ビデオゲーム、音楽などから恒常的に暴力を影響を受けていると、カナダの学者、教師、保護者らのグループが警告している。子どもが暴力描写に対してまったく無菌状態に置かれることはありえないが、最近の傾向として“メディア・バイオレンス”(メディア上での暴力描写)が一段と過激になっていると指摘している。また女性を軽視するような描写もあり、女性保護のために刑法の改正も必要だとしている。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 メディアが子どもにどのような影響を与えるかについては、多くの研究が発表されている。1992年に出版された「大きな世界、小さなスクリーン:アメリカ社会におけるテレビの役割」(仮訳)は、米国心理学会の研究班の調査によるもので、テレビが子どもに影響を与えるとの結果が出ている。 
 
 米イリノイ大学は小学校のときに、暴力描写の多いテレビにさらされると、ティーンエージャーになった段階で、攻撃的な行動がピークに達する傾向があるとの結果も出ている。ミシガン大学社会リサーチ研究所の2003年の調査では、6歳から9歳の間に暴力の多いテレビを見た子どもは、成人に達した後、配偶者への暴力や、犯罪を犯しやすい傾向があると指摘されている。 
 
 カナダではテレビは1952年に導入された。現在では、他の先進国と同様、テレビは必需品になっている。近年はテレビゲームや、インターネット、さらに音楽など様々なメディアにさらされているのが実情だ。 
 
 今回、メディアの影響を警告したグループの一人、ウェスタン・オンタリオ大学のピーター・ジェフ教授は、“メディア・バイオレンス”に長い間さらされることによって、特に子どもに影響が出ているとして、政府が対策を取るように要望している。 
 
 具体的には、音楽に関しては、暴力内容を歌詞にした音楽が出回っている現状から、CD販売などでは、テレビや映画と同様に、低年齢の者には販売できないような制限が必要だとしている。同グループでは、暴力やセックスを内容とした音楽の一部は、18歳以上の者に限るべきだとしている。 
 
 またテレビやラジオが暴力を内容とする番組を夜の9時以降には流さないように放送法の改正を求めている、また女性を軽視するようなビデオが販売されておることから、刑法の改正により、女性に対する蔑視を憎悪犯罪として取り締まるべきだとしている。 
 
 カナディアン・プレスなどによると、最近の調査では、レスラーの男性が女性を襲い、衣服をはいでいくビデオも販売されているという。グループでは、こうしたビデオは、法改正によって、社会として到底受け入れられないものとして否定されるのが望ましいと述べている。 
 
 子どもがテレビなどに釘付けにならないようにするには、親の責任が重要だといわれる。しかし、テレビでは、多くの親が長時間のテレビを見るのに反対しているが、飛び回る子どもがテレビを見ている間だけは、静かになるメリットがある。このため親の方針もあいまいなところがあるのは否定できない。 


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