2007年01月25日07時41分掲載  無料記事
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ホーム上に四散した有毒の水銀を放置 安全対策に気の緩み?

 米カリフォルニア州ロサンゼルスの地下鉄の駅構内で昨年暮、重金属の水銀がプラットホーム上にこぼれるという騒ぎがあった。水銀は有毒で、体に入ると深刻な影響を及ぼす。水銀をこぼしたのは地下鉄のプラットホームにいた乗客と思われる男性で、四散した後、構内電話で、地下鉄当局に「水銀をこぼした。清掃を頼む」と依頼した。しかし、当局側は、あまり重大だとは思わず、その後8時間にわたって放置したままだった。(ベリタ通信=江田信一郎) 
 
 米紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、水銀がこぼれたのは、2006年12月22日夜で、首都圏地下鉄(MTA)のパーシング・スクエア駅のプラットホーム。同駅に設置されていた監視カメラが当日の様子を映像を収めていた。MTAは最近、5分間のビデオを公開し、地元テレビ局などが、放映した。 
 
 水銀を持っていたのは、濃い茶色のジャケット姿の若い男性。同日10時45分ごろ、プラットホームを歩いていたこの男性は、途中まで来ると、突然しゃがみこみ、液体状の入ったガラス瓶を床の上でこね回した。 
 
 すると瓶が割れ、男性は驚いたようにのけぞった。男性はこの後、構内電話で駅事務局に連絡を入れ、水銀をこぼしたと通報した。しかし、駅の関係者は現場に駆けつけなかった。 
 
 ビデオは、水銀がこぼれた後の様子も記録していた。ホーム上では、十数人の人が付近を歩いていたが、ビデオを見る限り、水銀がこぼれていると気づいた人はいないようだった。 
 
 ホームを歩き、近くまで来て身をかわす人や、水溜りを越える感じでまたぐ人も。ある乗客は何だろうという感じで、水銀に触っていた。また別の人は、ガラスでも落ちているかといった仕草で、水玉のようになる水銀を拾おうとした。 
 
▼8時間後にようやく通報 
 
 発生から8時間経った翌23日の午前7時ごろ、ロサンゼルス郡保安官事務所に、水銀が四散しているとの通報があり、直ちに駅周辺の立ち入りを規制した。保安官事務所の係官が現場に駆けつけると、駅の作業員が、モップで水銀を清掃していた。しかし、明らかに有毒の重金属であることに気づいていない様子だったという。 
 
 これまでのところ、少なくとも4人の乗客が水銀に触れたり、誤って水銀を踏んだとみられている。郡保安官事務所では、水銀が口の中に入ったり、体の傷からが入らない限り、大きな危険はないとしている。しかし、MTAが水銀四散について、速やかに対応しなかったことに驚いている。 
 
 2001年の9・11同時多発テロ以降、地下鉄駅構内などでの不審物には、直ちに対応する態勢が取られているはず。今回のMTAの緊急時の対応を見る限り、かなり気の緩みがあることが明らかになった。MTAでは、危険物の扱いなどについて職員の再教育を行なう方針だ。 
 
 警察や米連邦捜査局(FBI)が調査を進めているが、水銀を持ち込んだ男性の身元は判明していない。今のところ、テロ事件との関連は小さいと判断している。 


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