2007年01月28日14時27分掲載  無料記事
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ワシントンで大掛かりな反戦集会 イラク増派計画に抗議

  【コングレス(米アリゾナ州)27日=マクレーン末子】ブッシュ大統領がイラクへの米軍増派計画を決めたことに抗議する反戦集会・行進が27日、ワシントンの米連邦議会議事堂付近で行なわれた。現役兵士や戦死兵の家族や、国会議員に混じって、ベトナム戦争時代の反戦運動で知られるハリウッド女優のジェーン・フォンダさんら著名人も顔をみせた。主催者団体での推定では、数万人が参加したとみられる。このほか米カリフォルニア州サンフランシスコなどの都市でも同様の抗議行動が展開された。 
 
 ブッシュ大統領は1月10日に、泥沼化しているイラク情勢の立て直しのために、新たに約2万1500人の米軍増派計画を発表した。これには06年11月の中間選挙で多数決を握った民主党などが強く反発、上院では増派計画に反対する決議案の採択を目指している。ただし、決議案には拘束力はない。 
 
 こうした状況下で、米国内に反戦ムードが広がった。今回、主催したのは、米最大の反戦団体「平和と正義連合」(UFPI)。31州、111都市から1400団体がバスや車でワシントンに乗り込んだ。 
 
 女優のジェーン・フォンダさんは、集会の演壇に立ち、マイクを握り、「この34年間、反戦集会で語らなかったが、もう沈黙はできない」と、スピーチに立った動機を語った。「今なおこのような反戦集会をしなければいけないとは悲しいことだ。我々はベトナム戦争から、何も教訓も得ていない」と、やむにやまれぬ気持ちから集会に加わった心情を明らかにした。 
 
 フォンダさんは、ベトナム戦争時、米軍兵士が戦っている最中に、北ベトナムを訪問するなど、反戦運動に積極的に関わったために、非国民扱いを受けた。現在でも、ベトナム帰還兵からの反発は大きいものがある。 
 
 集会では、公民権運動家の ジェシー・ジャクソン師や女優のスーザン・サランドンさんも、フォンダさんに続いてスピーチした。 
 
 今回の集会には、著名人だけでなく、兵士の家族参加が目立った。「兵士の家族、声高に反対」団体では、各州から多くの家族を送り込んだ。 
 
 イラクで息子を失った家族や、いまだイラクに駐在している息子を案じる家族、またはイラクから帰還後、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩む息子や夫をもつ家族が、即米軍イラクからの撤退を呼びかけた。 
 
 今回のUFPIのポスターで、象徴的存在となっているビル・アダムスさんは、5年12月に当時40歳の息子のブレントさんを失った。ブレントさんの乗っていたトラックは、イラクのラマデで、道路脇に仕掛けられた仕掛け爆弾で大破した。 
 
 ビルさんは、ブレントさんが戦争には懐疑的だったことを、その死後知った。「亡くなった息子の意志を貫いていくのが自分のこれからの使命」とビルさんは語る。 
 
 現役の兵士の中にも反戦の姿勢を示し、スピーチに立った者もいる。しかし軍服姿ではなく、私服で参加した。国防省の規則では、このような集会に軍服姿で参加することを禁じている。 
 
 一方、集会周辺では、保守派団体「フリー・リパブリック」が、このような反戦運動は、米国がテロとの戦いに払ってきた代償を傷つけるものだと反論。「反逆者よ、地獄に落ちろ」と書かれたポスターを持って、抗議した。 
 
 カリフォルニア州ロサンゼルスでも、数千人が集会、行進を行った。その中には戦死兵の母として活発な反戦運動をしているシンデイ・シーハンさんの姿もあった。また、サンフランシスコ、サンデイエゴ、オークランド、ソルトレイクシテイー、ラスベガス、デンバーでも同様な集会、行進が開かれた。 
 
 反戦運動の一環として29日には、UFPIは、議会にイラク戦争継続歳出予算 に反対投票するよう、直接上下両院議員に陳情する予定である。 


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