2007年01月28日15時06分掲載
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日中・広報文化交流最前線
活発化する日中の大学間交流 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
日中の学術教育交流で、ここ2,3年で確実に活発化している分野がある。それは日中の大学間の協力である。筆者も、日本の大学の事務所の開所式や共同セミナーに招かれたり、協力状況を見聞したりする機会があるので、以下の通り紹介したい。
●20以上の日本の大学が進出
ここ2,3年の非常に重要で喜ばしい動きとしては、日本の20以上の大学が中国に拠点を設置し、連絡員を長期出張させたり、中国人スタッフを常駐させたりいている。
◎北京市:北海道大学、東京大学、東京工業大学、一橋大学、富山大学(富山医科薬科大学)、京都大学、神戸大学、広島大学、山口大学、九州大学、桜美林大学、創価大学、帝京大学、福山大学、久留米大学、慶應義塾大学、早稲田大学
◎天津市:愛知大学
◎上海市:名古屋大学、熊本大学、立命館大学・立命館アジア太平洋大学
◎遼寧省大連市:滋賀大学
◎寧夏回族自治区:島根大学
◎雲南省昆明市:京都府立大学
これらの日本の大学の拠点は、中国の大学の関連施設の中に設けている例が多い(北京大学、清華大学、首都師範大学、北京師範大学、南開大学、東北経済大学、寧夏大学、雲南農業大学等)。
日本の大学の中国進出の目的は以下の様々なものがあるようである。
◎中国の教育・大学事情に関する情報収集
◎共同研究、学術講演会等の組織の準備
◎共同の課程の実施。学生を相互に派遣し、相手国で学習した結果を単位に相互認定。(例:早稲田大学と北京大学、東京工業大学と清華大学)
◎同窓生の集まりを組織
日本の大学の中国進出の背景には、以下があるようである。
◎あらゆる分野で中国の役割が大きくなり、文系、理科系共に、中国における研究、中国との協力が重要になってきたこと
◎大学間の競争が厳しくなる中で、各大学が自校の特徴、セールスポイントを明確にする過程で、中国との関係を積極的に位置づけようとしていること
◎日本の青年人口が減少している中で、中国から優秀な学生を日本に呼び寄せたいこと
◎国立大学に関しては、独立行政法人化したことが、上記の要素と相まっている
●ユニークな地方での協力
寧夏回族自治区では、島根大学と寧夏大学とが協力して、環境問題等に研究をする施設(「島根大学・寧夏大学国際共同研究所」)を設置している。筆者は、2006年12月、寧夏大学内の一つのビルに入っている同共同研究所を訪問し、島根大学から派遣されている所長、研究員(共に日本人)と意見交換する機会があった。以下は所長の説明である。
◎島根大学は1987年より寧夏大学と学術交流してきたが、協力を強化し、共同研究所を06年開所し、所長も06年6月より寧夏大学に常駐している。
◎研究の力点は、農業開発、環境保護等。(所長は、林学が専門。)
◎2007年は協力開始20周年なので、記念誌発行等の記念事業を実施する。
◎所長は、寧夏大学日本語学科のために、日本文化の講義も担当している。
寧夏回族自治区は日本との接触が少なく、日本人ビジネスマンも少ない(20名程度)ので、このような学術交流を通じての日本理解の進展は非常に大きな意義がある。
●将来は同窓会も?
総じて言えば、中国の大学では、日本の大学のような同窓会の組織、同窓生の集まりというのは、さほど活発、積極的ではないようである。同窓会組織のために会費を徴収するという習慣もない。また同窓会パーティーなどで会費を徴収する習慣も殆どない。会費を徴収しなければ、同窓会の集まりもなかなか開催しにくい(大学当局が費用負担すれば別であるが)。大学の「同窓会」という組織に法人格を付与されることも簡単ではないであろう。これらの諸点がうまくいけば、日本の同窓会組織が中国で更に発展していくことと思う。(つづく)
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。)
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