2007年02月04日07時52分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200702040752000
日中・広報文化交流最前線
中国中央テレビが大型日本紹介番組企画 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
中国人が日本、日本人について情報を得るソースとしては、テレビ、新聞、口コミ、インターネットなどが挙げられる。中国での各種世論調査で、7割前後が、日本関連情報をテレビを通じて得ていると回答しており、テレビを通じる日本理解増進は非常に重要である。しかし、中国のテレビで、まとまった形で日本を紹介する番組は非常に少ない。
その中で最近、中国中央テレビ(CCTV)の人気番組『東方時空』で、日本紹介の大型テレビ企画が立てられており、1月29日に北京市内ホテルで制作発表会(記者会見)が開かれた。筆者もこの制作発表会に参加したので、概要を紹介したい。
●「中国人の日本理解は足りない」
制作発表会会場には、中国、日本、シンガポールなどの各国の報道機関約50社、約100名が取材に訪れ、CCTV側からは梁暁濤・CCTVニュースセンター主任、梁建増・同新聞評論部主任、白岩松キャスターが出席、日本側からは原田誠・NHK中国総局長と筆者が来賓として出席した。
白岩松氏は、1968年生まれで本年39歳。本部がスイスにある世界経済フォーラムが2007年1月に発表した「2007年度ザ・ヤング・グローバル・リーダー」候補(世界から選ばれた250名)の中にも含まれている。
番組『東方時空』は、毎日18時14分〜18時59分のゴールデンタイムにCCTV1チャンネルで放送されている超人気番組である。
企画の名前は『岩松看日本』で、直訳すれば『岩松が日本を見る』だが、『岩松日本を行く』という意訳も出回り始めている。取材チーム(白岩松キャスターを含む8名)は、3月初旬に日本に向けて出発する予定である。2週間以上の取材活動の中で政治、経済、文化、社会などの分野を取材し、時には日本からの報告を中継で中国国内で放送し、また日本で録画した素材を何度かに分けてテレビで紹介する予定とのことである。
以前、『岩松が台湾を見る』という番組も放送され、中国国内で好評だったそうである。台湾、日本の後、米国、インド、韓国などを取材したいという。
CCTV関係者は『岩松日本を見る』の制作意図を、次のように説明した。
◎中国人は日本を知っていると思いがちだが、実はあまり理解できていない。現在、日本に関する著作で中国人に知られているものは少なく、書店に並んでいるのは相変わらず何十年前のものである。その中で代表的な著作はアメリカ人によって書かれた『菊と刀』である。数十年前、戴季陶は『日本論』の中で、「日本は中国を手術台にのせ、顕微鏡で何千回ものぞいたが、中国はどうだったか」という問いかけをしたが、この問いかけは今に至るも有効な問いかけである。
◎歴史上の怨みつらみではなく、互いに理性的な認識を持つべきである。今日の両国の大きな変化に対応して、お互いの客観的な理解が必要である。
◎その上で、将来に向かって、両国ひいては世界における繁栄と発展のために、互いに協力してその責任を遂行すべきである。
◎CCTVは、日本紹介大型企画実現の適当なタイミングを待っていた。昨年10月、安倍首相が訪中し、今年4月には温家宝総理が訪日予定である。CCTVがこのような重要な時期に『岩松が日本を見る』の制作を決めたことは、「国営テレビ局としての役割と責任」を表すものである。
「正直言って中日関係問題の取材ほど難しいテーマはない」と、白岩松氏は、自らの感じている大きな責任とプレッシャーを率直に述べた。彼は「もし単に感情的になってしまうだけでは、理性と客観性を失い、国や視聴者にマイナスの影響を与える恐れがある。理性的になりすぎると、視聴者からは感情的な反動があるだろう。自分は、なぜこれだけ長年にわたって、中国のどの報道機関も中日関係について触れたがらなかったのかが理解できる。扱い方が難しいというのが主な原因だと思う」と述べ、さらに「報道機関には、最初の一歩を踏み出す責任と勇気が必要であり、まずは我々が理解しようとすることが不可欠である」とも述べた。
●インターネットで番組への意見募る
この発表会に参加していた筆者は、「中国人の日本理解は足りない」と率直に明言したCCTV関係者の発言に、驚きと共感を感じながら、次の挨拶をさせて貰った。
◎中国人の日本理解増進のためのテレビ番組制作企画はありがたいことである。
◎番組では、政治、経済、社会、文化など全面的に日本を紹介して頂きたく、中国人の日本理解増進に役立つ番組を放送して頂きたい。
◎日中両国は様々な分野で先人達が苦労をし、協力を進めてきた。現在も緊密な協力が種々行われている。このことにも中国人視聴者の理解が及ぶように期待する。
◎将来、日中がいかなる分野で協力を発展させるべきか考えていく必要がある。その観点からも、環境、省エネ、ゴミ処理、防災、人口高齢化対応等で日本における取り組みを紹介することは有益であろう。日中が、世界の繁栄と安定のために協力できるようになることを心から期待している。
この番組でどのように日本、日本人を取材したら良いかについて、中国人ネット・ユーザー達が意見を述べるサイトが開設された(新浪、http://news.sina.com.cn/z/cctvyskrb/index.shtml)。2月3日昼時点で1250件以上の意見が寄せられている。日本のサイトでも反響が出始めている。日本紹介大型企画番組は珍しいことから、どのような番組に仕上がるのか、皆が注目していると言えよう。(つづく)
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。)
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。