2007年02月07日16時10分掲載  無料記事
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ロサンゼルス市でギャングの人種間抗争激化 市民も巻き添え死

 昨年12月、米カリフォルニア州ロサンゼルス市で、アフリカ系米国人(黒人)の14歳の少女が、ラティーノ(中南米系)の若者に射殺された。現場周辺は、ラティーノと黒人の街のギャング団の縄張りの境界線付近で、ラティーノの若者は、肌の色が違うというだけで少女を殺害した。この事件が象徴するように、ロサンゼルス市では近年、ラティーノと黒人のギャング団の抗争が、一般市民を巻き込む形で激化している。市当局も、ロサンゼルス市警(LAPD)や米連邦捜査局(FBI)などと協力し、対策に乗り出している。(ベリタ通信=江田信一郎) 
 
 米メディアによると、1990年代初めに、黒人が居住するサウス・セントラル地区などに、ラティーノが移り住むようになった。その後、ラティーノの人口は増え続け、人種間の摩擦が目立つようになっている。 
 
 経済的に貧困層が多い地域に住むラティーノと黒人は暴力団を組織し、麻薬などで利益を上げている。双方の組織は、縄張りをそれぞれ持っているが、近接した地域に住んでいる場合が多いため、双方で発砲事件が起きている。 
 
 ロサンゼルス市には現在、700のギャング組織がある。その構成員は4万人で、ラティーノ56%に対し、黒人は40%の割合になっている。数字上ではほぼ拮抗しているが、ラティーノのギャング団の中には、縄張りの境界線付近の黒人を抹殺しようと過激な行動に走る組織もある。 
 
 昨年12月15日に、歩道で友人らと話していた中学3年のシェリル・グリーンさんも、標的にする黒人を物色中のラティーノの若者に銃弾を浴びせられ、死亡した。銃の乱射で他の3人も負傷した。その後、付近のラティーノのギャング団の若者2人が殺人容疑で逮捕されている。 
 
 事件の衝撃は大きく、政治的な問題に発展した。市当局や警察はこれまで、人種間抗争を煽るのを警戒し、ギャング団の抗争が、人種問題に絡んでいるのを認めたがらなかった。しかし、ギャング団の中には、人種の違いだけで、公然と殺害を命じた組織もあることが明らかになり、本格的な対応を迫られている。 
 
 貧困な地域では、学校を卒業した若者が、ギャング団に入っていくのは難しくない。その後罪を犯すと、刑務所や留置場に送られるが、そこもラティーノと黒人がそれぞれのグループに分かれて収容されている。人種間の憎悪の感情は、刑務所内でも増幅され、出所してもその対立感情が持ち越され、悪循環となっている。 
 
 2006年には刑務所内で、ラティーノと黒人の収容者同士が乱闘を起こし、多数が負傷する事件も起きている。高校でも、人種間の対立が起きるようになっている。ギャング団が対立する周辺地域では、親は子どもたちに境界線を越えて相手側の陣地に立ち入らないように指示しているほどだ。 
 
 ロサンゼルスでは1991年に、交通違反で捕まった黒人が、白人警官らから暴行を受ける事件があった。翌92年の裁判では、警官が無罪の評決を受けたため、黒人らのいわゆる“ロス暴動”が発生、人種間摩擦が頂点に達したことは記憶に新しい。 
 
 今回、新たな形の人種間抗争が表面化してきたことに対し、ラティーノ系のビリャライゴサ市長は「誰も肌の色で生命を脅かされてはならない」と強調し、断固たる対策を取る決意を表明している。 


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