2007年02月07日16時26分掲載
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丸腰警官にようやく銃を返還 メキシコの汚職浄化作戦
米国国境に近い中米メキシコのティフアナ市。米国への麻薬密売の基地でもあり、また密売組織が絡んだ殺人事件が多発している場所だ。そこへ昨年12月に就任したカルデロン大統領が、浄化作戦の一環として、今年1月から中央から軍兵士と警官3000人を派遣。麻薬組織の用心棒になっている可能性のある地元警察から、犯罪に使われた可能性のある銃を特定するため、すべての銃を取り上げるという荒療治を行なった。これでは仕事ができないと嘆いていた丸腰にされた警官に、ようやく3週間ぶりに銃が戻された。(ベリタ通信=江口惇)
米カリフォルニア州サンディエゴの中心部から車で30分走れば、メキシコ国境に着く。国境をまたげば、そこは既にティフアナ市だ。陸の国境は、まだ米国人に旅券の携帯を義務付けていないため、身分を証明するものがあれば、簡単に行き来できる。
メキシコでは2006年に2000人が殺害されている。このうちティフアナでは300人で、このうち警官が13人含まれている。ティフアナは、米国に近いため麻薬組織が暗躍し、それに絡んだ凶悪事件が起きやすい環境にある。
カルデロン大統領の命令で、中央から重装備の軍兵士や警官が配置され、1月初めにティフアナ市にいる約2000人の警官から銃を一斉に取り上げた。同市の警官が麻薬密売組織に協力し、時として銃を使って働いている可能性があるため、銃を押収して、調べようとのアイディアだ。
この結果、警官はすべて丸腰になった。この荒療治に警官たちは、強く抗議し、職場放棄に出た。その後次第に職場に復帰したが、丸腰のまま。このため、一部の警官は、野球のバットや、パチンコ、石などを用意して、泥棒たちの逮捕に出動する有様だった。
中央から派遣された軍兵士らが、市内に要所に配置されたため、一応の治安は守られている。警官たちに銃が戻されたのは1月27日。警官たちは連日のように中央から派遣された捜査官の事情聴取を受けていたが、今のところ、逮捕者は出ていない。このためティフアナ警察当局では、中央政府に対し、速やかに調査結果を明らかにするよう求めている。
今回の浄化作戦の過程で、作戦に参加している中央の軍兵士ら6人が、検問の際に、車の捜索を行なっている運転手から金を受け取っている模様が、監視カメラに録音され、衝撃を与えた。中央でも地元でも、汚職が進行していることを裏付ける形になった。
カルデロン大統領は就任早々、麻薬の生産地や麻薬組織の暗躍で治安が悪化しているミチョアカン州やアカプルコ市などに、ティフアナ市と同様に軍隊を派遣し、麻薬の焼却などの作戦を展開している。
また収容中の麻薬組織のメキシコ人幹部を米国に積極的に引き渡すなど、麻薬戦争に対する積極的な姿勢が目立っている。これに対し、ブッシュ大統領は1月の一般教書の演説では言及しないなど、麻薬問題を忘れてしまったかのようだ。現在のところ、メキシコ側の麻薬戦争に対する熱意が突出した格好になっている。
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