2007年02月15日00時45分掲載
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共謀罪修正案に市民団体が警戒 「いかなる修正をしても共謀罪を認めることはできない!」
自民党法務部会の小委員会(笹川尭委員長)が2月6日に発表した共謀罪の修正案骨子に対し、市民団体の警戒感が高まっている。その内容は、共謀罪の対象犯罪を削減し、名称を「テロ・組織犯罪謀議罪」と変えて、市民団体や野党の抵抗をかわそうというもので、市民団体が発行するメルマガ「共謀罪を廃案に!」(発行:盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会)第16号(2月13日発行)は「この修正案骨子の意図は、破綻につぐ破綻を繰り返してきた共謀罪を、「大幅な修正」の名の下に、野党を説得して今国会で審議入りし成立させようとするものにほかなりません」と述べている。(大野和興)
共謀罪に反対し、廃案に向けての運動を進めてきた市民団体の自民党修正案に対する反対意見は次のようなものだ。
◇「テロ対策」といえば世論を沈黙させられる?
自民党法務部会小委員会が示した修正案骨子は、与党の大幅な譲歩どころか、実は共謀罪原案と同様に危険なものなのです。
修正案骨子は、名称を「テロ・組織犯罪謀議罪」としています。そもそも、政府・与党は共謀罪の新設を国連「越境組織犯罪防止条約」にもとづくもので、条約批准のために絶対必要と説明してきました。
条約は組織犯罪対策のために締結されたもので、テロ対策を目的としたものではありません。自民党は、テロ対策といえば、共謀罪に反対する世論を沈黙させ法案を成立させることができると考えているのかもしれませんが、むしろ共謀罪が現代の治安維持法であるという側面が、「テロ」という文言が入ったことで文字どおりはっきりと示されたともいえるのです。
◇対象犯罪を削減しても「共謀罪導入」は変わらない
また、共謀罪の対象犯罪を政府案の620から百数十に削減するとしていますが、削減したとしても共謀罪の危険な本質は何一つ変わりません。
日本の刑法体系は、犯罪が実際におこなわれた既遂犯の処罰を原則とし、犯罪実行以前の共謀は、ごく例外的にしか処罰規定していません。
そこに百数十もの共謀罪対象犯罪が導入されれば、日本の刑法体系は根本から転換を迫られます。
◇「夏の参院選前」の成立をねらっている
報道によれば、与党は2月中に共謀罪修正案をまとめる方向とのことです。
これは、安倍首相の今国会での共謀罪成立をめざすという方針の具体化であり、また与党・法務の共謀罪推進派の意向を反映するものにほかなりません。
夏の参議院選挙を控え、与党内には、今国会での共謀罪の審議入りには慎重な声も多いとの報道もなされていますが、これはことの一面にすぎません。
政府・与党は、できることならば参議院選挙の前に共謀罪を成立させたいのです。なぜなら、夏の参議院選挙では、与党が議席を減少させる可能性が高く、そうなれば国会運営は困難になるからです。
同メルマガは自民党の共謀罪修正案が対象としている対象犯罪一覧表の全文を掲載している。以下のようなものだ。
テロ・組織犯罪謀議罪の対象犯罪(案) H19.2.6
1 . テロ犯罪
○刑法
内乱(§77[1] )
外患誘致(§81)
外患援助(§82)
騒乱(§1O6(1)(2))
現住建造物等放火(§108 )
非現住建造物等放火(§109 )
建造物等以外放火(110[1] )
激発物破裂(§117[1])
電汽車往来危険(§125[1] )
艦船往来危険(§125[2] )
電汽車転覆(§126[1] )
艦船転覆(§126[2] )
水道毒物混入(§146前段 )
水道損壊等(§147 )
殺人(§199 )
逮捕監禁(§220 )
未成年者略取誘拐(§224 )
営利目的等略取誘拐(§225 )
身の代金目的略取等(§225の2 )
国外移送目的略取等(§226 )
被略取者等所在国外移送(§226の3 )
被略取者引渡し等(§227 )
強盗(§236 )
昏睡強盗(§239 )
建造物等損壊(§260 前段 )
○化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律
§38[1](化学兵器使用による毒性物質等の発散)
§38[2](毒性物質等の発散により生命等に危険を生じさせる
行為)
§39[1](化学兵器の製造等)
§39[2](化学兵器の所持、譲り渡し又は譲り受け)
§39[3](化学兵器の製造の用に供する目的による毒性物質等
の製造等)
○核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
§76の2[1][2](核燃料物質の取扱いによる人の生命、身体又
は財産に危険を生じさせる行為)
§76の3[1](核爆発を生じさせる行為)
○細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁
止並びに廃棄に関する条約の実施に関する法律
§9[1](生物兵器使用による生物剤等の発散)
§9[2](生物剤等の発散により人の生命等に危険を生じさせる
行為)
§10[1](生物兵器等の製造)
§10[2](生物兵器等の所持等)
○サリン等による人身被害の防止に関する法律
§5[1](サリン等の発散)
§6[1](サリン等の製造等)
§6[2](発散の用に供する目的でのサリン等の製造等)
○放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
§51[1](放射線の発散による人の生命、身体等危険)
○公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関す
る法律
§2(資金の提供)
§3(資金収集)
○航空機の強奪等の処罰に関する法律
§1(航空機の強取等)
§4(航空機の運航阻害)
○航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律
§1(航空機の危険を生じさせる行為)
§2[1](航行中の航空機を墜落させる等の行為)
§3[1](業務中の航空機の破壊等)
§4前段(業務中の航空機内に爆発物を持ち込む行為)
§4後段(業務中の航空機内に銃砲等を持ち込む行為)
○人質による強要行為等の処罰に関する法律
§1[1][2](人質による強要等)
○爆発物取締罰則
§1(爆発物使用)
§6(製造・輸入・所持・注文)
○火炎びんの使用等の処罰に関する法律
§2[1](火炎びんの使用)
○海底電信線保護万国連合条約罰則
§1[1](海底電信線の損壊による通信の障碍等)
○ガス事業法
§53[1](ガス工作物の損壊等によるガス供給妨害)
○下水道法
§45[1]後段(公共下水道等の施設の損壊等による下水の排除
の妨害)
○公海に関する条約の実施に伴う海底電線等の損壊行為の処罰に
関する法律
§1[1](海底電線の損壊による電気通信の妨害)
§2[1](海底パイプライン等の損壊による石油等の輸送等の妨
害)
○高速自動車国道法
§26(高速自動車国道の損壊等による高速自動車国道の効用の
阻害等)
○新幹線鉄道における列車連行の安全を妨げる行為の処罰に関す
る特例法
§2[1](運行保安設備の損壊等)
○水道法
§51[1](水道施設の損壊等による水の供給の妨害)
○電気事業法
§115[1](電気工作物の損壊等による発電等の妨害)
○電波法
§107(無線設備等による日本国憲法等を暴力で破壊すること
を主張する通信の発信)
§108の2[1](無線設備の損壊等による無線通信の妨害)
○道路運送法
§100[1](自動車道等の損壊による自動車の往来危険)
§101[1](一般乗合旅客自動車運送事業者の事業用自動車の転
覆等)
○熱供給事業法
§34[1](熱供給施設の損壊等による熱供給の妨害)
○有線電気通信法
§13(有線電気通信設備の損壊等による有線電気通信の妨害)
○流通食品への毒物の混入等の防止に関する特別措置法
§9[1](流通食品への毒物の混入等)
○自衛隊法
§121(自衛隊の所有し、又は使用する武器等の損壊等)
○日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第
六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の
地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法
§5(軍用物の損壊等)
等
2 薬物犯罪
〇刑法
あへん煙輸入等(§136 )
あへん煙吸食器具輸入等(§137 )
あへん煙吸食場所提供(§139[2] )
○あへん法
§51[1](けしの栽培等)
§52[1](あへん等の譲り渡し、譲り受け又は所持)
§54の2(けしの栽培等に要する資金等の提供等)
○覚せい剤取締法
§41[1](輸入又は製造)
§41の2[1](所持、譲り渡し又は譲り受け)
§41の9(覚せい剤の輸出入又は製造に要する資金等の提供等)
§41の10(覚せい剤原料の輸出入又は製造に要する資金等の提
供等)
○国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等
の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関す
る法律
§5(業として行う不法輸入等)
§6[1](不法収益等隠匿)
○大麻取締法
§24[1](栽培又は輸出入)
§24の2[1](所持、譲り受け又は譲り渡し)
○麻薬及び向精神薬取締法
§64[1](ジアセチルモルヒネ等の輸出入、製造)
§64の2[1](ジアセチルモルヒネ等の製剤等)
§65[1](ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の輸出入、製造等)
§66[1](ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬の製剤等)
§66の3[1](向精神薬の輸入等)
§68(麻薬の輸出入又は製造等に要する資金等の提供等)
等
3 銃器等犯罪
○銃砲刀剣類所持等取締法
§31の2[1](けん銃等の輸入)
§31の4[1](けん銃等の譲り渡し、譲り受け等)
§31の7[1] (けん銃実包の輸入)
§31の9[1] (けん銃実包の譲り渡し、譲り受け)
§31の13(けん銃等の輸入に要する資金等の提供)
○対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に開する法律
§22[1](対人地雷の製造)
○武器等製造法
§31[1](銃砲の無許可製造)
§31の2後段(猟銃の無許可製造)
等
4 密入国・人身取引等犯罪
〇刑法
人身売買(§226の2 )
○児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に
関する法律
§8[1](児童買春等目的人身売買)
§8[2](児童買春等目的被略取者国外移送)
○出入国管理及び難民認定法
§74[1](集団密航者を入国等させる行為)
§74の2[2](営利目的による集団密航者の輸送)
§74の4[1](集団密航で入国した外国人の収受等)
§74の8[2](営利目的による不法入国者の蔵匿等)
等
5 その他、資金源犯罪など、暴力団等の犯罪組織によって職業的又
は反復的に実行されるおそれの高い犯罪
ア 典型性が高いと考えられるもの
〇刑法
通貨偽造・行使(§148[1][2])
外国通貨偽造及び行使等(§149[1][2] )
支払用カード電磁的記録不正作出等(§163の2 )
不正電磁的記録カード所持(§163の3 )
賭博場開張等図利(§186[2])
詐欺(§246 )
盗品等有償譲受け(§256[2])
○外国為替及び外国貿易法
§69の6[1](無許可役務取引等)
○関税法
§109(輸入禁制品の輸入)
§109の2(輸入禁制品の外国貨物を置く場所の制限違反規定等)
等
イ その他、犯罪組織が関与すると思われるもの
○貸金業の規制等に関する法律
§47(無登録営業等)
○出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律
§5[1](高金利の契約)
§5[3](高金利の受領等)
§8[1](禁止を免れる行為)
○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律
§10[1](犯罪収益等隠匿)
○印紙犯罪処罰法
§1(印紙等の偽造変造・消印除去)
§2[1](偽・変造印紙の使用・交付・輸入・移入)
○外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関ス
ル法律
§1(偽造変造)
§2(輸入)
○郵便法
§84[1](切手類の偽造等)
○児童売春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に
関する法律
§4(児童売春)
§5[1](児童買春周旋)
§6[1](児童買春勧誘)
§7[4](児童ポルノ提供等)
○児童福祉法
§60[1](児童に淫行をさせる行為)
○売春防止法
§8[1](困惑等により売春をさせた者による対償の収受等)
§11[2](場所の提供等)
§12(売春をさせる業)
§13(資金等の提供)
○臓器の移植に関する法律
§20[1](臓器売買等)
○商標法
§78(商標権等の侵害)
○著作権法
§119(著作権等の侵害等)
○特許法
§196(特許権等の侵害)
等
ウ 検討を要するもの
○競馬法
§30(日本中央競馬会以外の者による競馬等)
○小型自動車競走法
§24(小型自動車競走施行者以外の者による小型自動車)
○自転車競技法
§18(競技施行者以外の者による自転車競走等)
○スポーツ振興投票の実施等に関する法律
§32(指定試合の結果を予想させて利益を図る行為)
○モーターボート競走法
§27(施行者以外の者によるモーターボート競走等)
○廃棄物の処理及び清掃に関する法律
§25[1](一般廃棄物の無許可収集等)
○補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律
§29(偽りその他の不正の手段による補助金等の受交付等)
等
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