2007年02月18日12時53分掲載
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脅しに屈しないとメキシコ大統領 麻薬組織の報復の動きに断固宣言
メキシコのカルデロン大統領が、麻薬組織の脅しに屈しないと宣言した。昨年12月に就任したカルデロン大統領は、直ちに国軍や連邦警察官を麻薬生産や密売拠点に派遣し、対麻薬戦争に乗り出していた。これに対し、最近ゲレロ州の観光都市アカプルコにある司法省オフィスが武装グループに襲撃され、7人が殺害された。襲撃は大統領が進める麻薬撲滅対策への警告の可能性が高いが、カルデロン大統領は、麻薬グループへの摘発を容赦しないと言明した。(ベリタ通信=江田信一郎)
メキシコでは、コカイン、マリファナ、ヘロインのほか覚せい剤が、大量に米国や、メキシコ国内に流れ、大きな社会問題になっている。カルデロン大統領は就任直後、2万5000人の国軍兵士らを動員し、第一弾としてミチョアカン州で麻薬栽培の場所などを一層作戦を展開した。
大統領が麻薬対策で、国軍部隊を使用したのは、警察が麻薬組織と内通している恐れがあるためだともいわれる。
次いで米国国境に近いバハカリフォルニア州のティフアナ市では、国軍部隊が展開した直後に、市の警察官全員から一時銃を取り上げるという荒業をみせている。名目は、市の警官の銃が犯罪に使われたかを調査するためとしているが、国軍兵士の安全確保の狙いもあったとされる。
その後ゲレロ州のアカプルコで掃討作戦を開始した。これに対し、2月6日、アカプルコにある州司法省の二カ所のオフィスが、16人の武装グループに襲撃され、捜査官5人と秘書2人が殺害された。
武装グループは、軍服姿に変装してオフィスを訪れ、武器のチェックをするといって、銃を提供させた後、銃弾を浴びせた。現場に残された車両の中に、警告文が残されており、「われわれは連邦政府を何とも感じない。これが証拠だ」と書いてあった。
▼2000人が麻薬絡みで殺害
これに対し、カルデロン大統領は、メキシコの敵である者に対しては、停戦もなく、容赦もしないと述べ、引き続き麻薬犯罪摘発を継続する考えを明らかにした。
メキシコでは麻薬事件に絡んで昨年2000人が殺害されている。背景には、麻薬組織同士の抗争もあるといわれ、処刑スタイルでの殺害や、首を切断するという手口も使われている。
メキシコの地下に根を張っている麻薬犯罪を、力だけで粉砕できるかどうかは、不確定な要素もあるが、カルデロン大統領の麻薬取り締まりに対し、ことし1月にはブッシュ米大統領が電話をかけ、賞賛したという。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、カルデロン大統領は今後、「黄金の三角地帯」と呼ばれる、チワワ、ドゥランゴ、シナロア3州での掃討作戦を検討しているという。ここには、麻薬組織の一つ、シナロア・カルテルの首領ホアキン・グスマンが潜伏しているとみられている。
カルデロン大統領は今年1月に、ティフアナ市で勢力を張っていた麻薬組織アレジャノ・フェリックスの幹部や、大手麻薬組織ガルフ・カルテルの元首領オシエル・カルデナスらを米政府当局に引き渡している。麻薬組織の幹部は、メキシコ内で拘束されている限り、刑務所内から外部に指示を出すことも可能だったが、米国に移送されたことで、これが困難になり、組織としては痛手を蒙る形になった。
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