2007年02月25日09時33分掲載  無料記事
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「路上の逆上」の代償は禁固25年 銃を発砲し人身事故を誘発

 ドライバーが車の運転中に割り込みや追い越しなどに腹を立てて、過激な報復行動を取る、いわゆる「ロード・レージ(路上の逆上)」が最近増える傾向にあるという。米フロリダ州で2年前、典型的な事件が起きた。自分が運転する車の前にトラックが入り込んだことに逆上したドライバーが、銃を発砲。恐怖を抱いたトラックが逃げる最中に、別の車に衝突し、死亡事故を起こしている。その事件にこのほど判決が下り、逆上した代償として、ドライバーに禁固25年の刑が言い渡された。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米メディアによると、2005年5月27日夜、フロリダ州のパルメット市北方の州間道路41号線で、キャデラックのドゥビルを運転していたブルース・ペイトン(49)が、害虫駆除のフォード製トラックが、前に入り込んだのに腹を立てた。 
 
 ペイトンはトラックに向かって「俺を殺す気か」と怒鳴り声を上げた。トラックの運転手ダリエン・キャッパーさん(33)も言い返してスピードを上げた。ペイトンは追跡を始める前にいったん、車を止め、トランクを開け、中にあった銃を取り出した。 
 
 キャッパーさんの車には作業員が数人に乗っていたが、追いかけてきたペイトンが銃を発砲しているのに気がついた。恐れをなしたトラックはスピードを上げて41号線をひた走った。パルメット市北方で41号線と交差する道路に差しかかった際、赤信号になった。 
 
 トラックは停止する義務があったが、ペイトンの追跡を振り切るために赤信号を無視して交差点に進入。トラックは交差点に入る際、警笛を鳴らし続け、ヘッドライトも繰り返し点滅させたという。 
 
 しかし、トラックはイセニア・トリビオさん運転の乗用車に激突し、一緒に乗っていた妹のエリザベス・トリビオさん(14)が死亡した。エリザベスさんたちは、ローラースケート場に遊びに行く途中だった。 
 
 ペイトンは、救援行動も取らずに、停車もせずに現場から立ち去った。その後、ペイトンは、犠牲者のエリザベスさんの家族とは知り合いだったという運命的な巡り合わせが明らかになっている。 
 
▼銃は不法所持 
 
 検察側は、ペイトンをどう処罰するかの検討をした結果、少女の死亡はペイトンに責任があると判断し、非謀殺人の罪や、銃の不法所持などで起訴した。ペイトンは麻薬事件などの重罪で前歴があるため、銃の所持は許されていなかった。 
 
 一方、赤信号を無視して交差点に入ったキャッパーさんについては、警察側は処罰すべきだとの考えを主張した。しかし、検察側は、生命に危害が及ぶと思い、暴力的な威圧から逃げようとしている最中に起きた事故だとして、起訴は見送った。 
 
 2月15日に陪審員団から有罪の評決が下され、その後禁固25年の刑が宣告された。法廷でペイトンは、量刑言い渡しの前に、傍聴席にいたエリザベスさんの家族に向かい、「彼女は可愛い少女だった。母親が彼女を死ぬほど愛していたのを知っていた。今、言えることは、ひたすら申し訳ないということだ」と述べ、謝罪した。 
 
 判決に際し、エドワード・ニコラス判事は、「道路がますます混雑し、ドライバーの忍耐心も小さくなっているのかもしれない。ロード・レージによる事件がますます増えている」と、憂慮の念を示した。 


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