2007年03月21日12時47分掲載
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日本に生活向上、現実的な援助求める ネットが支えるイラクの庶民生活
イラク戦争開戦から丸4年。米軍の早期撤退を促す声が高まる中、カオスと化したイラク国内では誰もが復興を念頭に入れ、現実を踏まえて明日の生活を展望している。断続的な停電のため光熱の大半を発電機に頼り、電気街で1ドル程度から売られているコンピューター部品をかき集め自ら製造。衛星パラボラアンテナを活用し、インターネットで情報交換するイラク人が増え始めた。イラクの人々の日本の援助への要望は現実的だ。たくましい生活ぶりをのぞき、日本への声を拾ってみた。(トニー高橋)
「サダム政権時代は厳しいメディア検閲と公安当局の監視体制で情報統制されていた。確かに治安悪化やテロに悩まされる。でも在宅でネットビジネスを始め、拡大している」。バグダッド在住のアーメッド・サフィールさん(38)はこう話してくれた。
オートパーツや中古自動車貿易商のアーメッドさんは店舗が治安悪化で開店休業状態に陥ったため、ネットビジネスへ移行した。卸業業者や取引先がいるアラブ首長国連邦ドバイ、ヨルダンのアンマン、イラク国内のモスルやバスラとメールやIP電話でやり取りし始めた。「ネットビジネスの世界は今までと比べると2倍も3倍も早い。視野も広がり、商売はインターネットを通してさらに拡大している」とたくましく語った。
インターネットによる活動はビジネスだけではなく、生活の一つとして受け入れられている。同じくバグダッドに住むサマール・アル・サマディ(40)さんは「治安悪化で通学できなくなったり、休校したりするため、インターネットを通して隣国の家庭教師やチャットスクールと交流している。止むを得ない状況だが子供にとっては唯一の手段だ」と話した。
ネット利用の普及率は三人に一人の割合とみられ、家庭にあるコンピューターで接続しているらしい。生活は引きこもりになりがちで、ストレスが原因でネット依存症や思い詰める人が少なくない。「出会いサイトやチャットルームの恋愛や政治の話になると本気になってしまい収拾がつかなくなる時がある」とサマディーさんは苦言した。
インターネットを通して世界中のネットユーザーとコミュニケーションを図るイラク人は今後の期待や希望も現実的だ。特に日本に対しては具体的な行動を示して欲しいと主張する。
モハメッド・アブ・ヌーリさん(39)もその1人だ。「日本には戦争と平和の講演を依頼することが多く、医薬品や古着などの供給で援助してくれている。欧米諸国、韓国、インドの企業や団体はイラク人の人材養成や研修制度を設けている。日本はもっと現実的な行動を起こさなければならない」と問題提起した。
実際、2003年からトルコ、ヨルダン、アラブ首長国連邦で行われているイラク復興見本市やセミナーでは、欧米、韓国、中国、そしてインドの企業や団体は現地の復興開発から人材管理に至るまで幅広く活動を行っている。その基礎となる人材養成に熱心という。
「1990年。バグダッドには3000人も日本人が在留していた。彼らの大半がエンジニアか専門職でイラク人に対して技術指導をしていた。国内でなく隣国でもいいからもう一度、あの時のように指導してイラク人を育てて欲しい」とヌーリさんは訴えた。
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