2007年03月21日13時46分掲載
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性犯罪者の“排除”は現代の魔女狩りか 行き場失うとの懸念も
性犯罪の前歴者に対する米国社会の“封じ込め”が一段と強まっている。性犯罪者の矯正は難しく、刑務所を出所しても性犯罪を繰り返すのでは、との不安が世間一般にあるからだ。この結果、性犯罪を犯す危険人物として、各州に登録された者は、就職もままならなくなる。性犯罪者の餌食になる恐れのある子どもを抱える親たちは、性犯罪者をできるだけ遠くに置いておきたいとの願望に駆られているが、一部の関係者から、「まるで現代のウィッチハント(魔女狩り)だ」との声も上がっている。(ベリタ通信=江口惇)
ニューヨーク州では最近、性犯罪の刑期を終了しても、危険と思われる人物を引き続き拘束することを可能とする法律を制定した。性犯罪者の矯正は困難との立場に立ったものだが、性犯罪者であっても、矯正は可能する意見の人々は批判している。
ウィスコンシン州では、州議会が、性犯罪の前歴者が乗る車の番号プレートの色をグリーンとする法案を検討している。子どもが集まる公園や学校の通学路に、性犯罪者の車が乗りつければ、直ちに不審車として注意を喚起できるとのアイディアだ。
また地元紙グリーンベイ・プレスガゼットによると、同州グリーンベイ市では、性犯罪の前歴者を子どもたちが集まる学校、教会、公園、託児所などから締め出すため、こうした建物や施設がある場所から600メートル以内に、前歴者が居住するのを禁止する条例制定を目指している。実現すれば、市内中心部からほぼ前歴者が排除されることになるという。
この条例制定をめぐっては、「性犯罪の前歴者が行くところがなくなり、結局彼らは地下にもぐってしまい、矯正の機会が失われる」として、魔女狩りだとの批判も出ている。
一方、ミネソタ州でも、前歴者の車のプレートのグリーンにする法案が検討されたが、これは否決された。その代わりに性犯罪の前歴者に対し、電子メールや他のウエブサイトへのアドレスを当局に通報することを義務付ける法案を準備している。メールのアドレスなどを知らせることで、前歴者がポルノサイトへアクセスしていないかを調べるのが狙いだ。
性犯罪の前歴者に関しては、地球測位システム(GPS)の装置を足首にはめさせたり、またインターネット上で前歴者の居場所を公開するなどの措置が各地域で取られている。
ウィスコンシン州のジャスティン・ミラーさんは、性犯罪で10カ月間服役し出所した。現在、保護観察中の身だが、就職口は見つからない。子どもが通う学校などへ近づくことも許されない。州立大学でコンピューターのクラスを取ろうとしたが、保護監察官から、ポルノサイトにアクセスする恐れがあるとの理由で禁じられた。
米国では子どもへの性犯罪が、メディアを通じて大きく報道されるために、性犯罪者や前歴者への風当たりが強まっている。しかし、厄介者を排除するような形で規制が強化されている状況により、前歴者が行き場を失いつつある。米紙ロサンゼルス・タイムズによると、ホームレスの間で性犯罪の前歴者が増加しており、彼らの追跡が困難になりつつあるという。
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