2007年03月23日14時39分掲載
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2億4000万円の和解金にも不満な原告 米国での警官による嫌がらせ被害訴訟
交通警官に嫌がらせを受けたとして訴訟を起こし、カリフォルニア州当局から実に200万ドル(約2億4000万円)の和解金を得た米国人男性が、いまだに不満のようだ。裁判では警官の嫌がらせが認定され、賠償金は州当局が払ったが、男性は本来なら警官個人が支払うべき金だったとして「税金の無駄使いではないか」と批判を続けている。(ベリタ通信=江田信一郎)
この男性は、同州ラモナのスティーブ・グラッシリさん。事の発端は、同州ハイウェーパトロールのリチャード・バー警官とのトラブルだが、もう10年も前の話だ。
米紙ノース・カウンティ・タイムズなどによると、当時、水槽の取り付け工事をしていたグラッシリさんは、仕事で使うトラックの性能を高めるため、車についていた触媒コンバーターを外した。同コンバーターは、排気ガスの浄化を行なう装置だが、これを外すと馬力が増すので、業者の間では密かに行なわれていた。勿論、取り外しは違法である。
バー警官は、コンバーターを取り外した車をしばしば摘発していた。しかし、グラッシリさんはある日、バー警官が自分のヨットを牽引するトラックから、コンバーターを密かに外していたという事実を知った。自分の車から、コンバーターを外しながら、その一方で、摘発を続ける行為に憤慨した。
グラッシリさんは1997年3月に、バー警官の勤務先に苦情を申し立てた。その後、バー警官やその同僚からの嫌がらせがしばしば起きるようになった。グラッシリさんは、その後5年間に、交通警官から何度も停められ、反則キップを切られた。バー警官の同僚のマイケル・トス警官も協力し、グラッシリさんに対してトラック登録期限を意図的に通知せず、このためグラッシリさんは、トラック一台を没収された。このためビジネスは大きな打撃を受けた。
グラッシリさんは一連の嫌がらせはバー警官の報復だったとして、バー警官らを訴えた。一審は敗訴したが、2002年に控訴審は、一審の裁判上の手続きミスを認めたため、裁判がやり直しになった。04年4月、裁判所の陪審は、交通警官が報復を行なったと認定し、懲罰的賠償金400万ドルを含む計450万ドル(約5億3000万円)の支払いを命じた。懲罰的賠償金とは、普通の賠償金とは別で、一種のみせしめのための罰金。
しかし、控訴審は06年9月、懲罰的賠償金が大きすぎるとし、賠償金を減額、その後、州最高裁までもつれ込んだが、結局ことし3月に和解が成立し、州当局から200万ドルの小切手がグラッシリさんに送られてきた。
グラッシリさんは、バー警官がなんのお咎めもなく勤務を続けているのに疑問を感じている。当時、バー警官は、グラッシリさんを見つけると、執拗に追尾を続けたという。「街を走るときは、頻繁に停車を命じられ、反則キップを切られた」と語っている。グラッシリさんは、被告の警官が賠償金を払わず、納税者が払う形になったことについて「正しくない」と、割り切れない表情を見せている。
州当局が支払った理由は、バー警官個人が賠償金を払うことになれば、生活が破壊されるとの理由だった。確かに州民が納めた税金であるだけに、第三者の納税者が割りを食ったともいえる。
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