2007年04月23日00時00分掲載
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仏大統領選の投票始まる サルコジ、ロワイヤル両氏がしのぎ削る
与党「国民運動連合」党首で右派のニコラ・サルコジ前内相と野党第一党「社会党」候補で左派のセゴレーヌ・ロワイヤル元家庭担当相が激しく競り合う中、フランス大統領選挙の第1回投票が22日午前、始まった。第1回投票で過半数に達する候補者がいない場合、多く票を獲得した上位2位のみが決選投票へと進出できる。決選投票は5月6日に行われる。サルコジ氏とロワイヤル氏の2人が決選投票へ進出することは確実視されている。(及川健二)
「かつてないほどの激戦」といわれる同選挙は、他の欧米諸国から強い関心を集めている。新大統領はフランス一国だけではなく、「欧州全体の将来を決める」リーダーになるからだ。ナチス・ドイツの悪夢から欧州が解放されて以来、フランスは欧州でリーダー・シップを発揮し、欧州統合の牽引役を担ってきた。フランスを「欧州の頭脳と心臓」と表現する有識者もいる。
しかし、ユーロ通貨の導入や欧州連合の加盟国拡大など順調に進んできた欧州統合は現在、停滞状態にある。背景には「欧州憲法」が頓挫したことにある。
欧州連合の基本理念と規範を銘記した「欧州憲法」が2004年に草案され、欧州各国首脳が批准を約束した。全加盟国の批准によって発効する同憲法は欧州の骨格になるもので、全ての国で批准されれば統合への大きな進展となる。
しかし、2005年5月29日にフランスで実施された批准の是非を問う国民投票では反対票が約54%と賛成を上回り、欧州憲法に「ノン」をつきつけた。投票率は69・37%と高かったことから、ジャック・シラク大統領は「国民の意思を尊重する」と述べた。
翌月にはオランダでも国民投票で批准が否決された。両国の拒否によって、欧州憲法が発効する可能性はなくなった。
宙ぶらりんになった欧州憲法をどうするのか、フランスの次期大統領が決定することになる。
サルコジ候補は自他共に認める「大の米国好き」で、「仏米両国の関係立て直し・強化」を掲げる。同氏が大統領になった場合、米国との協調を重視する親米路線で欧州を建設していくにちがいない。
一方、ロワイヤル氏はあくまで「米国とは異なる」フランスや欧州の「独自性」を強調しており、米国とは適度に距離を置いた欧州を目指すものとみられる。
各種世論調査では、サルコジ氏の優勢が伝えられている。だが、「反米意識」の強いフランス国民が米国贔屓で、仏国内で不人気のブッシュ大統領との親密ぶりをアピールするサルコジ氏を最終的に選ぶかどうかという声も上がっている。
大手世論調査機関イプソスが20日に発表した最新の世論調査では、有権者の3割が投票する候補を決めていないと答えている。ロワイヤル氏に風が吹き、「フランス初の女性大統領、誕生」という可能性も否定できない。
22日の投票で、各候補の実力が明らかになる。サルコジ氏に大差をつけられれば、決選投票に進めても勝つ可能性が低くなるため、ロワイヤル氏がどこまで肉薄できるかに注目が集まっている。投票は即日開票され、結果は日本時間で23日の昼頃には判明する。
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