2007年04月24日00時45分掲載  無料記事
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国際テレビ放送の戦い激化 BBC、フランス24がアラビア語放送 マリオ・ルベトキン

 【IPSコラムニスト・サービス=ベリタ通信】10年の歴史を持つアラブのテレビネットワーク、アルジャジーラは昨年11月、西側市場の一部に食い込もうと英語放送を開始し、巨大な視聴者をめぐって他の国際テレビネットワークと世界的な戦いを巻き起こした。この部門の専門家は、世界的なニュースとコミュニケーションをめぐる新しい時代が始まっていると見ている。 
 
 ロンドンのBBCと最近設立されたフランス24の広報担当者は、両者のテレビ世界への参入がアルジャジーラの英語放送との競争によるものとはしていないが、確かなことは、両者とも4月にアラビア語の衛星放送の発表、ないし試験放送を開始したことである。 
 
 「BBCのアラビア語放送を開始するには、一番いいタイミングではなかったことは認める」とBBCの戦略主任であるダニエル・ジョッドは言う。イラク戦争はアラブ世界で英国に対する強い反感を生み出したという。そのために、BBCの新しい放送が成功するのが難しくなった。放送は11月に始まることになっている。 
 
 「ジャーナリスト訓練センター」(本部・パリ)の会長、ヘンリー・ピゲットによると、フランス24のアラビア語放送開始という決定は、2年前に設立された官民合弁事業を強化する計画の一部である。現在までは、フランス24はフランス語で24時間、ニュースを放送していたが、最近になって英語の24時間放送が加わった。 
 
 フランス24の創設は、フランスに焦点を当てたニュース、特に分析を提供する世界的なテレビ局がないというフランスの官と民の懸念に対応したものであった。これはイラク戦争が始まる前の時期に特に強く感じられた。シラク大統領の侵攻に反対する声明は、国際テレビニュース・ネットワーク、特に米国のネットワークではごくわずかな注目しか引かなかった。 
 
 1日2時間のアラビア語放送をしているイタリアのラジオ・テレビ放送のRAIを除いて、アラビア語の放送をしている主要な国際的テレビ放送はない。米国、それに規模は小さいが日本、ロシア、ドイツ、スペインが英語では放送している。 
 
 カタール大学の学者、ムハマド・ミスターによると、アラブ世界向けのテレビ放送は、アルジャジーラとアルアラビアによって起きている文化的変化を考慮に入れなければならない。両放送局の広報によると、両放送は衛星で4000万人以上に届いている。信頼性がなければ、新しい放送は、米政府が推し進めているアラビア語テレビ、アルフラのように未来がない。 
 
 現地と地域の文化に対する尊敬が、最新の技術的進歩や投資家の十分な資金よりも重要である、とロンドンで発行されるアラビア語新聞、アルクズ・アルアラビの編集長、アブデュル・バリ・アトワンは言う。 
 
 しかしながら、英語放送で「北」に入り込もうとしている唯一の「南」のテレビネットワークであるアルジャジーラもまた、大きな課題に直面している。英語とアラビア語放送に加え、カタールに本部を置くアルジャジーラは10年間でスポーツ、子供、経済、ドキュメンタリーのチャンネルも設けた。今年末には、地域の国々向けのアラビア語の日刊紙と携帯電話を通じた新しいニュース・サービスを開始することを発表した。メディア帝国に新たな次元が加わることになる。 
 
 このテレビ局の特徴のひとつは、その記者とスタッフがカタールだけでなく、多くのアラブ諸国からきていることである。同じように、ドーハ、ロンドン、ワシントン、クアラルンプールから放送する英語のアルジャジーラの主要なジャーナリストは、英語を話すアラブ人ばかりでなく、英国人と米国人(BBC、CNN、ABCにいたキャスターを含む)である。 
 
 主要なコメンテーターのひとりで米国人ジャーナリストのデビッド・マラシュは、アルジャジーラと競争する放送は「そのカバーの80パーセントを米国と西欧に焦点を当てている。英語のアルジャジーラは、それらの地域に加え、カメラマン、ジャーナリスト、プロデューサーのネットワークを、ラテンアメリカ、アフリカ、中東、南アジア、東アジアに伸ばしている。要するに、われわれの放送は、世界の南と通常いわれているところを優先させる」と言う。 
 
 マラシュによると、米国外にいるアルジャジーラの8800万人の潜在的視聴者の80パーセントは英語を第2言語として話し、彼らの注目を集めるために、高品質のニュースを提供している。それは、「最高レベルの透明性、正確さ、現実を最もよく表現することを意味する」。 
 
 マラシュにとって、アルジャジーラの新しい英語放送は、品質における著しい飛躍を意味する。なぜなら、「いやが応でも、英語は現代世界における政治、経済、哲学の言葉であるからである」。 
 
 国際テレビの戦いは、新しい演じ手が舞台に登場し、南北間のニュース・バランスの古い要因を変えるので、今後数ヶ月、数年のうちに激化するのは間違いない。 
 
*マリオ・ルベトキン IPS通信社社長 
 
(翻訳 鳥居英晴) 


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