2007年05月27日04時33分掲載  無料記事
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仏首相が「差別発言」の議員を招待

 5月23日、フランスのフランソワ・フィヨン首相が与党「国民運動連合」の下院議員を集めて首相府で行った昼食会に、「差別発言」を理由に有罪判決を受けているクリスティアン・ヴァネスト下院議員を招待したことが、波紋を呼んでいる。(及川健二) 
 
 ヴァネスト議員は熱心なカトリック信者で党内の超保守派として知られている。同氏は地方紙「北の声」のインタビューに2005年2月に登場し、「同性愛は人類の存続にとって脅威だ」「私は同性愛が危険だといっているわけではない。異性愛に比べて劣るといっているのだ。もし、同性愛が奨励されるならば、人類にとって危険きわまりない」と発言した。 
 
2004年12月30日に施行された法律によって、同性愛者に対する差別的な言動は人権侵害にあたると定められた。2005年9月に「アクト・アップ」など複数の人権団体がヴァネスト議員の発言は人権侵害にあたると提訴した。 
 
 2006年1月24日、リール地方裁判所はヴァネスト議員の発言を差別的言動と認定し、3000ユーロの罰金を命じた。2007年1月25日、ドゥーエ高等裁判所は地裁の判断を支持し、有罪判決を下した。 
 
 2度の判決を受けてニコラ・サルコジ「国民運動連合」党首(当時)は次の下院選挙でヴァネスト議員を公認しないと言明した。しかし、今回の下院選で同党の地方支部はヴァネスト議員の推薦を決定し、地方レベルでは同議員を応援している。そして今回、首相府の昼食会にヴァネスト氏が招待され、フィヨン首相と親しげに語り合う姿がメディアで報じられた。 
 
 「国民運動連合」に所属し、HIV感染者であり男性同性愛者であることを公表しているイルドフランス地方圏議会議員のジャン・リュック・ロメロ氏は自身のブログで「ヴァネスト氏が首相府の昼食会に招かれ、フィヨン首相の傍らにいる姿を見て、たいへんな衝撃を覚えている」「2度も有罪判決を受けた議員に対して立場を明確にするようにフィヨン首相に求めたい」との声明を発表した。 
 
そして、「首相がしたことは、フランスの人道主義者や同性愛者を思い切り平手打ちするような行為だ」と非難した。 


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