2007年06月18日12時30分掲載  無料記事
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帰還した従軍兵士の心のケアが後手に 背景に予算や医療専門家不足

  【コングレス(米アリゾナ州)17日=マクレーン末子 】イラクや・アフガニスタン戦争に少なくとも一度従軍した米兵の間で、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病、不安神経症などを訴えるケースが目立っているものの、治療専門家や医療予算の不足の問題から、兵士が十分な治療を受けられない状態になっているという。15日米国防総省の精神医療研究班が調査報告書を発表した。 
 
 米紙ワシントン・ポストによると、従軍兵のうち陸軍では38%、海兵隊では31%、州兵では49%が精神的な障害を訴えた。研究班は米議会の委嘱を受け、2006年5月から米国、欧州、アジアにある38の米軍基地内の施設で聞き取り調査などをした。 
 
 報告書には、PTSDと外傷性脳損傷の2つが、イラクとアフガニスタン従軍兵士の間で目立つと指摘している。症状として、悪夢や睡眠障害、集中欠如、怒り、無謀な行動に走ることが挙げられている。そして多くの兵士は自己治療として麻薬やアルコールに走るという。 
 
 このように、帰還した兵士の多くが精神障害を抱える理由の一つに、軍が精神医療の専門家を十分に確保していないことを報告書は挙げている。兵士の治療にあたる専門家の多くは、自らも度重なる派遣でストレスをため、職を離れている。例としては、空軍では3年から7年で専門家の20%が軍を去っている。 
 
 もう一つの大きな問題は、軍の精神医療ケアへの資金不足がある。議会は、今年PTSDと外傷性脳損傷を患う兵士用に6億ドル(約720億円)の追加予算を決めた。しかし、その予算では兵士に十分な治療が与えられないというのが現状だ。 
 
 治療体制の欠如に加えて、兵士は精神障害を汚名と考えがちだという。また兵士の多くは、部隊に留まりたいがゆえに上官に症状を過小報告し、治療を積極的に求めないともいわれる。 
 
 報告書は、軍基地内に精神医療専門家を増やし、兵士は一人で悩むことなく治療を受けられるようにするべきと提言している。また軍は、肉体的訓練のみならず、心のケアに力を置くべきだとしている。 


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