2007年07月16日09時18分掲載
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中東
精神的な障害起こした米兵士に非情な扱い 広がる支援の輪
イラク戦争に従軍中に負傷し、その後精神的な障害を訴えた米兵士たちが、軍から元々そうした障害を抱えていたのが原因だと一方的に診断され、除隊を余儀なくされるケースが目立っている。軍は障害を戦争によるものとせず、入隊前からの障害と位置づけることで、傷病手当や治療費も払おうとしない。民主党の上院議員らが、こうした障害を理由にした除隊を一時的にストップさせる法案を提出するなど、支援の輪が広がっている。(米アリゾナ州コングレス・マクレーン末子)
米ABCテレビによると、戦争に従軍し、精神的な障害を起こし、心的外傷後ストレス障害( PTSD)などと診断されれば、当然公的な治療が受けられる。しかし、精神的な障害が、戦争と無関係とみなされ除隊処分を受ければ、軍には必要な義務は生じない。
国防総省の集計では、戦争などとは無関係の人格障害と認定され除隊になったのは、過去6年間で2万2000人以上に及んでいる。
戦闘地での傷病兵士たちは、帰還後所属基地で軍医の診断を受ける。負傷、病気の程度により、兵士として任務遂行できないと軍医が判断した場合、兵士たちは名誉の除隊となり、手続きが完了次第、傷病手当が支払われる。しかし、軍医は精神障害を患った兵士に、入隊前からの人格障害が原因と診断を下す場合があるという。
オハイオ州出身のジョナサン・タウンさん(25)も軍から人格障害として除隊された一人である。
2004年秋、バクダッド西にあるラマデイで、ロケット弾がタウンさん所属部隊の司令部を直撃した。ロケット弾は、当時技術兵 だったタウンさんを吹き飛ばし、首にはロケット弾の破片がささった。幸い破片は取り除かれたが、後遺症は残った。タウンさんは、記憶障害、うつ病、 頭痛、不眠に悩まされてきた。
2年後タウンさんは、所属のコロラド州にあるカーソン基地で、これらの症状への治療を求めた。すると、軍は症状は任務によるものではなく、入隊前からあった人格障害によるものという診断を下し、除隊を命じた。
兵士たちは、入隊前に精神的、肉体的チェックを受け、 戦地派遣前には再び同様の検査を受けることになっている。もし入隊前の人格障害を問題とするならば、なぜ入隊時に軍は兵士の健康状態をきちんと把握していなかったかと、 退役軍人専門家は指摘する。
タウンさんは軍を去る日、入隊時に支給された一時金の内3000ドル(約36万円)を返還しなければいけないと言われる。従軍契約期間内の除隊では、期間に応じて入隊時の一時金返還が要求される。従軍した期間が短い場合は、返還すべき金額は、軍から支払われる最後の給料の額を超え兵士たちに借金として残る。
タウンさんの除隊がネットで伝えられて以来、退役軍人団体を中心に、軍への怒りの声とともに、除隊兵たちを支援しようとする動きが見られている。
4月には人気バンドを率いるロックミュージシャンのデイブ・マシューズさんは、ニューヨークでのコンサートでタウンさんのことを話した。それがきっかけで、マシューズさんのウエブサイトにファンからの寄付金が集まり始めた。また、現在、議会と国防総省に人格障害除隊への調査を要求する23000人の署名が寄せられている。
こうした支援組織の活動のお陰で、タウンさんは現在は、退役軍人局 (VA)から、治療や手当ての支払いを受け始めたという。
一方、政府機関の活動を調査する米政府監査院(GAO)は最近、退役軍人の精神衛生の調査の一部としてカーソン基地を調査し始めた。また、大統領選候補のバラク・オバマ上院議員(民主党、イリノイ州選出)を含む6人の上院議員もこのほど、従軍兵士たちの人格障害除隊を一時的に差し控える法律の修正案を出した。
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