2007年08月07日09時50分掲載
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安倍政権を検証する
たるみきった自民党の組織 参院選惨敗後の党機関紙『自由民主』に投票前の記事が!?
自民党が惨敗した、あの参院選が終わってから1週間ほどの8月4日(土)、日本記者クラブ(東京都千代田区)で開かれた新聞、テレビのジャーナリストたちの会合「テーマは〈参院選報道とこれから〉」に出席した。その折に同記者クラブで自民党機関紙『自由民主』(7月31日付=毎週火曜日、自民党本部発行)と民主党機関紙『民主』(8月3日付=第1・第3金曜日、民主党プレス民主編集部発行)を入手した。(安原和雄)
まず投票日から2日後の日付である『自由民主』を広げてみた。自民党の惨敗をどのように総括しているかに関心があったからである。
第一面にはつぎのような大見出しが躍っている。
政治の不安定化を阻止せよ
「経済低迷」を招いた愚を繰り返すな
私はこの見出しは、勝利した民主党への対抗策として打ち出した選挙後の自民党の心構えと受け取った。
さらに記事の中見出しに「成長か停滞か」、「改革か逆行か」、「国民利益優先か政権獲得優先か」、「責任政党か無責任政党か」の4本が目立つ形で配されている。その意味するところは、例えば「成長か停滞か」では、前者の「成長」が自民党、後者の「停滞」が民主党の代名詞といいたいのだろうと思った。後の3つの対立語も同様である。つまり勝利した民主党の政策や政治姿勢は本当に国民にとって受け容れることができるものなのか―という疑問符を掲げて、自民党の逆攻勢が始まったと読んだ。
ここまではなるほどという印象だったが、記事を読んで驚いた。書き出しはつぎのような文章が並んでいる。
「参院選の投票日、7月29日が迫っている」。(ここで「えっ?」と思った)。つづいてつぎの文章である。
「仮に参院の主導権を譲り渡す事態となれば、政治は再び不安定となる。経済低迷は避けられず、ようやくここまで回復してきた景気が、逆戻りすることになりかねない。14年前、わが党が敗北したために、長い経済低迷を招いた愚を、再び繰り返してはならない。情勢は予断を許さない。・・・」と。
なんとこれは投票日前に書いた記事をそのまま印刷して投票日から2日後の日付で配布したものである。
2〜3ページには「駆ける! 安倍総裁 響く! 改革の訴え全国に」という見出しで選挙運動中の安倍演説が掲載されている。まあ、これはこれで後日の参考資料にはなる。
さらに後半部分には4ページにわたって「比例代表公認候補者の一覧」が落選者も含めて顔写真付きでずらりと並んでいる。
全部を読み終えて、「やれ、やれ」という思いを抱くほかなかった。内部事情はいろいろあっただろう。しかしこれは一般紙でいえば、投票日前の土曜日の情報を載せた新聞を投票が終わって、勝敗の結果がはっきりしている月曜日に読者に届けるに等しい。これは誰が考えても通用しないし、読者の理解を得られるような話ではない。新聞としては何の価値もない。ところが自民党はそれが通用すると思っているのだろうか。
「記事作成、印刷手順からいってこうなるほかなかった」というのであれば、組織の惰性、怠慢であり、一方、「勝利するのだからこれでいい」と考えていたとすれば、組織としての傲慢といえよう。要するに「たるみきった自民党組織」というほかない。「開かれた組織」でもなければ、「説明責任」に心を配る組織でもない。
参考までに8月3日付の『民主』を紹介しておく。第一面にはつぎの見出しが並んでいる。
党 第1党に60議席獲得 逆転なる
ご支援に感謝 「国民の生活が第一」の政治を実現します
憲法改正より生活維新
3ページ目には「国民の生活が第一」を実現する担い手、というタイトルで当選者一覧(候補者一覧ではない)が顔写真付きで並んでいる。
別のページでは「女性躍進 生活者の視点で政治を変える」という特集面も組んでいる。
『民主』の紙面に躍動感があるのに比べて、『自由民主』は灰色に沈みきっている。民主党は勝つべくして勝ったようであり、一方、自民党は負けるべくして負けたというべきである。
*本稿は「安原和雄の仏教経済塾」からの転載です。原文を一部修正しました。
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