2007年08月19日13時36分掲載  無料記事
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中東

“偽装負傷”の米兵士に寛大な措置 米大陪審が重罪での起訴見送る

 イラク戦争に従軍し、休暇で一時帰国していたニューヨーク市ブロンクスの陸軍二等兵が、再びイラクに戻る恐怖心から、妻と協議し、妻の知人に金を払って自分の足を撃たせ、再派遣を回避しようとする事件があった。この兵士は、本来なら共同謀議などの重罪で起訴されるところだったが、当地の大陪審はこのほど、イラク戦争の悪夢に苦しでいた心理的状態を斟酌し、異例の重罪適用見送りを決めた。重罪が適用され、有罪となれば最高で禁固25年の刑が下されるところだった。この兵士は今後、事件の虚偽報告など軽罪で問われるが、最高でも1年の刑で済む見通し。(米アリゾナ州コングレス=マクレーン末子) 
 
 米紙デイリー・ニュースによると、この兵士は、ジョナサン・アポンテ被告(21)。ことし6月末に10カ月のイラク従軍から帰還し、2週間の休暇を新妻アレクサンドラ・ゴンサレス被告(22)と過ごしていた。 
 
 アポンテ被告は、妻にイラクでの惨状を語り、もう戻りたくないと話した。妻は知人のフェリクス・パディジャ被告に足を撃ってもらったらどうかと提案し、500ドル(約6万円)で話は成立した。 
 
 イラクへの再派遣される当日の7月9日、アポンテ被告はニューヨーク・ブロンクスの町角に立ち、予定通りに膝を撃たれ、病院に運ばれた。妻が警察から事情聴取される中で、同被告は仕組まれた銃撃だったことを告白した。 
 
 アポンテ被告ら3人は7月に重罪の共同謀議や暴行などで逮捕された。同被告は、大陪審に出廷し、涙ながらに、イラクでの惨状、残虐な日々を語った。 
 
 「人々が撃たれ、爆撃で飛ばされるのを見てきた。私も、武装勢力から1度以上撃たれた。イラクにいるのが恐ろしかった」 
 
 「ずっと悪夢に悩まされてきた。人々の叫び、銃声、爆撃の音が聞こえる。夢の中で、体の焼ける匂いもする」とも話した。 
 
 「わが国を愛しているし、従軍もしたかった。しかし、イラクで戦場を経験した後、もうイラクへは戻れなかった」 
 
 この供述を受け、大陪審はアポンテ被告への重罪適用を見送った。これに対し、妻と実行者の二人は重罪の暴行罪で起訴され、最高で禁固25年までの重刑が科される可能性がある。アポンテ被告の虚偽報告の罪は来月裁かれる。 


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