2007年08月24日18時25分掲載  無料記事
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イタリアでも日本アニメを違法コピー 途上国だけでない「著作権無法地帯」

  欧米でも、日本のアニメやゲームが若者に人気を博している。そのキャラクターに扮するコスプレの集いも盛んだ。一方、日本のアニメ人気に先に火がついたアジアは、もっぱら「違法コピー天国」として目の敵にされている。しかし、最近、コンピュータソフトウェア著作権協議会(ACCS=東京・文京区)が告訴してイタリアで明らかになった違法コピーの実態は、違法コピーはアジアばかりでなく欧米でも決して少なくないことをうかがわせる。いまだに欧米志向、アジア蔑視から抜け出せない人も多い日本社会は、視野をもっと広げる必要性があるようだ。(川村敏久) 
 
 ACCSは、2004年から会員企業からの通報に基づいてイタリアでの違法コピーの実態を調査し始めた。翌年には、ミラノ、ローマなどで海賊版が売られているのを確認、同国財務警察に摘発を要請してきた。06年3月には、手塚プロ、集英社、スクエア・エニックスなど会員企業6社のDVDアニメ『火の鳥』『ナルト』、映画『ファイナルファンタジー』などの海賊版を売っていたローマのアニメショップ3店を著作権法違反の疑いで家宅捜索し、400枚以上の海賊版DVDを押収した。アニメショップとは、DVDや紙の漫画本、フィギュアと呼ばれるキャラクターの人形などを売っている、日本では東京・秋葉原などに多い業態の店だという。 
 
 イタリアには、文芸、音楽、絵画、漫画、映画などあらゆる著作権を管理するイタリア著作者出版者協会(SIAE=本部・ローマ)という管理団体がある。約5000人の職員が、著作権者約8万人の作品を扱っているという。06年には、日本の映画などを含め、全体でCD約300万枚、DVDやビデオ約959万枚を押収した。 
 
▼「文化立国のイタリアで」 
 
 同国内では、あらゆる著作物を流通させるためにはSIAEの発行するシールが必要になるが、今回押収された海賊版にも、このシールが貼られていた。業者がウソの申請をしてSIAEの許可を得ているらしいというから悪質だ。店は「闇」というようなイメージの小規模なものでなく、大規模な「正規」的なショップがほとんどだという。 
 
 ACCSの久保田裕専務理事は、「日本では、中国をはじめとするアジアの国ばかりを著作権意識が低いと問題視していて、欧米は法令を順守しているようになんとなく思い込んでいるが、実際は大差ないことを認識してほしい」と話す。 
 
 ACCSの今回の活動を支援してきた野村吉太郎弁護士は、「文化立国のイタリアでは、さすがに(著作権問題に敏感な)ディズニーの海賊版はないが、日本の著作物は海賊版が横行しているのに驚いた」と話す。 
 
 今回の摘発で協力関係を結んできたACCSとSIAEは5月末、今後、日本のコンテンツのイタリアでの海賊版を取り締まるため、相互に情報交換する提携の合意文書を取り交わした。SIAEが海賊版が疑われるDVDなどの情報を、ACCSが受け海賊版かどうかを判定するという。 
 
▼創作を促すアジア型のモデルを 
 
 今回の提携合意を発表する6月中旬に東京で行われた記者会見に同席したSIAEのヴィート・アルファーノ侵害行為対策部門部長は、「イタリアなどEU諸国の著作権保護期間は70年で、日本の50年と異なるが、提携で日本の著作権者と直接意志疎通できるようになったので問題はない」と話していた。 
 
 昨年から日本では、著作権保護期間を死後50年から70年に延長すべきか否かという論争が、識者・文化人の間で戦わされている、延長すべきと論陣を張る人々の多くが「欧米ではすでに20年延長されている」ということを主張の論拠にあげている。 
 
 しかし、延長反対を掲げる人々は、「延長はアメリカから外圧であって、これまで日本での著作権論議は、概して欧米をモデルに権利を強化する方向に向かってきた。しかし、これからは作品がインターネットなどを通じて多くの人の目に触れたり、新たな創作を促すアジア型のモデルを検討すべきでないのか」と主張する。 
 
 インターネットや物流の発達で、コンテンツや著作権の領域では、欧米、アジアといった世界の垣根はなくなりつつある。アジアからの文化発信地として、日本の対応が今問われている。 


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