2007年12月08日16時21分掲載
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戦争を知らない世代へ
「尽忠報国」の特攻とアッラー信仰の自爆テロ 中谷孝(元日本軍特務機関員)
12月8日は、1941年(昭和16年)の太平洋戦争(当時の言葉では大東亜戦争)の開始日である。特攻世代のひとりである私は、この無謀な戦争を思い起こすたびに、6年前の9月11日にアメリカで起きた同時多発テロが人ごととは思えない気持ちになる。「尽忠報国」教育を受けて戦闘機で敵艦に突っ込んでいった日本の若者と、アッラーへ忠誠心を示してニューヨークの高層ビルに航空機もろとも突撃したアラブの若者の姿が重なるのである。
2001年9月11日のテレビニュース画面に突如報じられていた驚愕の大事件。私はリアルタイムで見ていたが、これが現実であろうかと自己の目を疑った。二機目の突入超高層ビルの崩壊、これが今現在起きている。夢ではないかと思う画面だった。
今年も記念番組でイスラム過激派・テロの非人道性を非難していた。テロは許されるものではないが、アラブの過激派と云われる人達が何故、自己の生命を捨てて迄対米テロを行うのか、彼らは自爆で抗議することに生命を捨てる以上の価値があるのだ。一方的に非難しても解決には結びつかない。何故ブッシュ政権になってからテロが続くのか、イスラム過激派青年にとって自爆テロは唯一の抵抗手段であり、アッラーに対する忠誠心の証明なのだ。
自爆攻撃の歴史は私の知る限り太平洋戦争中の日本海軍に始る。フィリッピン海域で関大尉が250Kg爆弾を装着した戦闘機で敵艦に突込んだ。これに続く者が現れると、陸海軍は神風特別攻撃隊と名付けて制度化した。続いて人間爆弾に人間魚雷等と人命を無視した自爆兵器を開発し“大義に生きる日本民族独自の美徳”と称賛した。
太平洋戦争後、自爆攻撃の報道を聞くことは無かったが、内戦のスリランカで大統領がヒンドゥー教徒の自爆犯により暗殺され、続いてインドのラジブ・ガンジー首相がスリランカ女性の自爆により暗殺された。近年自爆テロはアラブ・イスラム過激派の殉教行為として定着している。その最たるものがニューヨーク9.11テロである。
勿論イスラムの教義から見れば決して正しいものではないと思われるが一部のアラブ民族がアメリカに対して抱く怨念を理解すれば、彼等にテロを思い止まらせるのは容易ではないことがわかる。テロの非人道性のみを訴えても決して解決の緒は見つからない。テロを計画する側、実行する犯人の心情を理解し対象にされる側にも反省が必要なのではあるまいか。日本の世論はアメリカの言い分に偏り過ぎている様に思えてならない。テロ以外抵抗の方法が無いと信じるアラブの人達を非難するだけで解決する問題ではない。
9月11日のテレビ番組ではテロは兇悪な暴挙としてのみ報じられ、敢えて非人道的報復に走ったアラブ青年の心情に触れた報道を見なかった。このままでは日本もテロの対象になりかねない。
曽て尽忠報国教育で育った私達特攻世代は、当時の自分の心境が思い浮かぶ。日本国は生命を捧げることが最高の道徳だった。
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