2008年01月02日02時17分掲載
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CIAが破壊したテープと9・11に絡むサウジ・パキスタン関係
12月5日、米中央情報局(CIA)のマイケル・ヘイデン長官は、アルカイダに属する容疑者の取調べの模様を撮影したビデオテープ少なくとも2本が2005年に廃棄されたとの声明を発表した。このテープはCIAが9・11委員会にも、またザカリア
ス・ムサウイの訴訟の際に連邦裁判所にも提出しなかったもので、ヘイデン長官によれば、尋問にあたった職員の身の安全を守るために廃棄されたとのことである。失われたテープをめぐり米ジャーナリスト・ジェラルド・ボスナーの分析を紹介する。(TUP速報)
he Huffington Post
ジェラルド・ポスナー
2007年12月7日
ヘイデン長官は、廃棄されたビデオテープに映っていたアルカイダ容疑者のひとりについては公表を避けたが、もうひとりについては、アブ・ズベイダであることを明らかにした。パキスタンで足取りをつかまれ逮捕された2003年当時、アブ・ズベイダは第一級の重要テロ容疑者だった。2006年9月、ブッシュ大統領は記
者会見でアメリカの尋問手法に問題はないと述べたが、このときズベイダ容疑者の名前をあげた。同大統領は、ズベイダが逮捕時に負傷していたことと、当初は取調べに協力的でなかったが、いったん口を割るとその情報は「きわめて重要」であったことを認めている。
2003年のニューヨークタイムスのベストセラーである拙書”Why America Slept:The Failure to Prevent 9/11”(仮訳:アメリカの惰眠:阻止されなかった9・11事件)” の第19章「尋問」で、私はアブ・ズベイダについて詳しく解説したが、ここで、ズベイダが当初いかにアメリカ側の尋問に答えることを拒否したか
を書いた。またアメリカ側がいわゆる「偽旗」作戦で、負傷したズベイダをサウジアラビアに引き渡すかのように装ってアフガニスタンに移送したことについても書いた。ズベイダはサウジでは指名手配を受けており、サウジで拷問を受け殺されることを恐れるあまりサウジ情報部員を装うアメリカ人工作員に対して協力してくるだろうとアメリカ側は確信していた。
ところが「サウジ」尋問官に対峙したズベイダは、まったく恐れる様子を見せなかった。それどころか、この情報を提供してくれた2つのアメリカ情報筋によれば、ズベイダは安堵した様子だったという。アメリカ人取調官に対しては自分の名前さえ明かそうとしなかったズベイダが、急に意気込んで話し始めたというのだ。アメリカ人には殺されるかと恐れていたのでサウジアラビア人に会えて嬉しいと言った後で、尋問官に対しサウジの王族に電話をしてくれるように頼んだ。
記憶をたよりに王族の自宅と携帯の電話番号も伝え、そこに電話してくれればわかるはずだと請合った。
その王族とはファハド国王の甥でありサウジ最大の出版社の会長を務めるアフメド・ビン・サルマン・ビン・アブドゥル・アジズ王子だった。後にアメリカ捜査当局は、同時多発テロが発生した9月11日にアフメド王子がアメリカ国内にいたことを確認することになる。
アメリカ取調官は鎮痛剤を使ってズベイダの口を割らせた。協力的なときは薬を与え、黙り込むと薬を与えないようにしたのだ。チオペンタールナトリウム(いわゆる自白薬)の点滴も用いられた。最初にアフメド王子の名が出た数時間後、尋問官は、その情報の信憑性を疑ってみせ、ズベイダはサウジ王室を誹謗した罪で死刑に処せられるだろうと言った。
そのときである。9.11の秘密のいくつかが噴出したのは。取調官のひとりから聞いたところによれば、ズベイダの短い独白
はまるで、9.11についてついに解読された「ロゼッタストーン」のようだったという。
ズベイダ自身とアルカイダの組織が、サウジアラビアとパキスタン両国政府内の高いレベルによりいかに支持されていたかの詳細が語られたのだった。
ズベイダは主な連絡先として、サウジ王室の別の2人の王子とパキスタン空軍参謀長の名前もあげた。さらに、このうちサウジ国王の甥とパキスタン空軍参謀長のふたりは、アメリカで9月11日に大規模なテロ作戦が計画されていることを知っていたと語って取調官を驚愕させた。
ズベイダが名前を出したこの4人について調査することができればいいのだが、それは不可能だ。4人全員がすでに死亡しているのだ。サウジの王子3人のなかで、国王の甥のアフメド王子(43)は国内随一の病院で脂肪吸引を受けた後に心臓発作または血餅(どの報告書を信じるかによる)で死んでいる。
2番目のスルタン・ビン・ファイサル・ビン・トゥルキ・アル・サウド王子(41)は、その翌日アフメド王子の葬式に向かう途中に車両の自損事故で死亡、そして、ズベイダが名指しした3番目のファハド・ビン・トゥルキ・ビン・サウド・アル・カビール王子(25)は、その1週間後に、サウジ王室によれば「口渇のため」死
亡している。
最後にパキスタン空軍参謀長のムシャフ・アリ・ミールは、妻と側近15人とともに乗っていた飛行機が爆発して死亡した。03年2月に起きたこの爆発事故は破壊工作活動であった疑いがある。この爆発をパキスタン政府が調査したかは定かではないが、いずれにせよその結果は一切公表されていない。
対テロ戦争におけるアメリカのもっとも緊密な同盟国であるサウジアラビアとパキスタンを9.11のテロ攻撃に密かに結びつけたのは、アルカイダ幹部の工作員のなかでもズベイダただ一人である。ズベイダの自白を受けてなお、ブッシュとCIAがサウジ王室とパキスタン軍を擁護するのはなぜだろうか。言うまでもなく、アフガニスタンの完全な泥沼化を防ぐためだけでなく、しだいに力を伸ばしてきているイランに対抗するためにも、ブッシュ政権が両国の助力を絶対的に必要としているからである。サウジ政府もパキスタン政府もスンニ派系であり、イランの再生を恐れる点ではアメリカと同様である。
しかしだからといって9.11の真相を解明するための手がかりを全力で追及しなくていいということになるだろうか。答えはもちろん否であるが、これこそブッシュ政権が行っていることだ。
そして、ズベイダ尋問のテープが廃棄されたことで、その隠蔽が進んでいる。
アメリカ国民は9.11の真相をもれなく知る権利がある。重要証拠を廃棄することで隠蔽工作に加担したCIA職員の責任を問わねばならない。
原文URL:
<http://www.huffingtonpost.com/gerald-posner/the-cias-destroyed-inter_b_75850.ht
ml>
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