2008年03月24日21時41分掲載  無料記事
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橋本勝21世紀風刺画日記

第92回:たった4000人の米兵しか戦死していないのか!?

 アメリカが一方的に始めたイラク戦争が5年をすぎた。状況は悪化するばかりで解決の目途はまったく立っていない。そしてついに、米兵の戦死者が4000人を超えた。そんなにも多くの戦死者が、という見方もあろう。だが刺激的な言い方をすれば4千人という数は少なすぎると思う。戦争の民営化による”民間人兵士”の犠牲や、米国籍を持たない兵士は公的な戦死者にはカウントされない、さらに帰還後、戦場で心身に負った傷が原因で死んだり、自殺した者を加えれば戦死者の数はもっと増えるはずだ。 
 
 それにしても4000人という米兵の戦死者は、イラク人のこの戦争での犠牲者15万人(少なく見積もってだ)と比べると少なすぎる。戦場は外国だから、米本土の一般市民に犠牲はでないし、それにベトナム戦争での米兵の戦死者5万8千人と比べるとあまりに少ない。明らかに最近の戦争での米兵の戦死は減少している。アフガン戦争でも、湾岸戦争でも、中南米の紛争でも、米兵の犠牲は驚くほど少ない。なるべく米兵の戦死者の数を少なくしようとしているのは、米軍が兵士の命を大切にしているからではない。戦死者が増えると国民の間に反戦意識が強まるからである。 
 
 今、イラク帰還兵の中に重いPTSDの後遺症により、普通の生活にもどれずホームレスになる者が多いという。何やらベトナム戦争の末期に似てきた。だが、アメリカが史上はじめて敗北したはずのベトナム戦争なのに、アメリカは負けたとは思っていない。戦争の理由にしても、共産主義の侵略から自由世界を守るという大義は正しかった。その証拠に21世紀を目前にして共産主義国家は崩壊してしていったではないか。だからイラク戦争も「大量破壊兵器」「フセインとアルカイダの関係」というのは誤りであったとしても、民主主義を世界に広めるという、アメリカの聖なる使命は間違っていない。……そう考えている超軍事大国のアメリカが、戦争依存症国家から脱するためには、米兵の戦死者が4万人、いや40万人を超えないと駄目なのかもしれない。(橋本勝) 


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