2008年04月20日20時56分掲載  無料記事
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山は泣いている

27・登山道の三要素──リズム、山の道、環境との調和 山川陽一

第7章 わたしたちの活動・2 
 
 リズム、水の道、環境との調和。わたしはこの三つが、登山道を考える三大要素であると思っている。 
 
リズム 
 
 山歩きで疲れない秘訣は、一定の歩幅でリズムよく歩くこと。人それぞれ体力も違うし、足の長さも違う。そのとき背負っている荷物の重量も違うので、ひとくちにリズムと言っても、百人百様のリズムということになるが、とにかく自分のリズムで歩くことが疲れないコツである。登山道は、そんな百様のリズムに対応できる構造になっているといいのだが、大きな問題は階段である。 
 大体の場合、階段というやつは、作る側の都合で勝手に歩幅を決めてしまって、歩く側の都合を無視している。奥行きのある階段などは、一段上がっては、一歩平を歩いて、また一段という具合に歩きのリズムを全く度外視した構造である。下りの場合も、トントントンというわけにはいかず、リズムを崩すことおびただしい。一段の高さが高すぎるのも、余計なエネルギーを費やして疲労の大きな原因になる。公園の中の散歩道なら、リズムなどは大きなファクターにならないが、一日歩き続けることが前提の山歩きでは、リズムよく歩ける道こそがいい道である。 
 
水の道 
 
 山の斜面に溝を掘って道を作るということは、そこが水路にもなることを意味する。配慮なく道を作ると、雨が降るたびに土を削り、どんどん侵食して掘割のようになっていく。 
また、丸太などを使って階段を作ると、丸太の内側の土が雨のたび流されてえぐられた状態になり、歩く場所として用を成さなくなってしまう。人は、おのずと階段を避けて外側を歩く。道の外側に自然発生的にどんどん新しい道ができていく。 
 
 先日浅間高原に行ったとき、登山道のところどころに横断する浅い溝を掘り、溝の端に穴を掘って、流れた水を受ける浸透マスが作られていた。道を管理している森林管理署に問い合わせたら、特段新しい工法ではなくかなり昔から行われている方法だということである。どんな形が最適なのか大きな研究課題であるが、いずれにしても、如何に水を逃がすかは、登山道設計上の大きなポイントのひとつである。 
 
環境との調和 
 
 登山道の建設が山の景観を台無しにしている代表例として、よく引き合いに出されるのが大台ケ原の空中回廊と称される木道である。さすがは奈良県で、まるで宮大工が手がけたごとき総檜作りの立派な構造の木道が、空中に張り出してそびえている。大きな国の予算を使ってこんな人工構造物を山の中に作ってひんしゅくを買った。さすがに、施主の環境省も反省して、道の延伸計画の際には、登山経験者の意見をよく聞きながら、周囲の自然にマッチしたものを考えるようになった。 
 
 過日、鳥海山に行ったときも、まるで都市公園の中の道のように両側に玉石が並べられ、砂利が敷き詰められた広い道が続いていたし、立山でもコンクリートの排水路を両側に作った道が周囲の山岳景観にそぐわないと槍玉に挙げられている。 
 
 立派過ぎる人工構築物は山に似合わない。国や自治体の予算のあり方にも及ぶことであるが、どんな大雨が来てもびくともしないものを、大金を投入して作るのか、雨で崩れたらこまめに手当てができるような保守体制にお金を回すのか、この辺についても考えをめぐらす必要がありそうだ。 
 
 こんなことを考えていくと、少しずつ登山道のあるべきイメージが浮かび上がってくる。            (つづく) 


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