2008年04月27日10時26分掲載
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G8
G8サミットを機に進む監視強化 札幌の3公園に使用自粛規制、カメラも増設
今年7月の北海道洞爺湖G8サミットを理由に、札幌市では監視カメラの増設や公園の使用自粛規制など、過剰ともいえる警備が加速している。4月12日、東京で、シンポジウム「G8サミットで拡大する監視社会」が開催され、札幌市の現状や日本の監視問題について報告が行われた。プライバシーアクション・札幌の新田真澄さんは、「札幌の3つの公園(大通り公園、中島公園、円山公園)で毎年恒例のイベントが自粛の対象になっている。申請には応じるとは言うものの、事実上、社会活動が規制されている状況」と現状を紹介した。(木村嘉代子)
監視カメラに関しては、新田さんは「G8サミットに向けて、札幌市は93台の監視カメラの増設を決めた。市営交通の地下鉄駅構内の30台はG8終了後撤去するというが、水道局配水池に設置される63台は残すといっている。これに先立って、『札幌市防犯カメラの設置及び運用に関するガイドライン』が策定された。昨年5回の検討委員会で検討されただけで、議会を経ずに急遽決まり、2008年1月付でパンフレットも発行した。記録装置がついていない防犯カメラが対象だが、監視カメラとどれほどの違いがあるのか疑問が残る。さらに、『安心・安全まちづくり条例』制定の準備も進み、次第に行動範囲を狭められてきている。G8サミットに連動し、萎縮効果が現れている気がして、非常に心配している」と語った。
浜島望さん(一矢の会)は、「北海道洞爺湖G8サミット会場まで車で移動する可能性が高く、そのルートにNシステムを設置して監視すると考えられる。札幌から洞爺湖へ向かう国道230号線の定山渓付近にNシステムが設置されている。千歳空港からは高速道路を利用でき、その道央道にも何ヶ所かついている。高速道路と平行した国道36号線にも設置されている」と述べた。
そして、「Nシステムは小型化しており、装着が容易になっている北海道洞爺湖G8サミットを機会に、全国的に普及するのではないか」と懸念を表明した。
▽外国人管理も強化か
自由人権協会の旗手明さんは、「G8サミットのテロ対策に対応しながら、外国人に対する管理が進められるのではないか」と外国人管理の強化という観点から発言。
「今回、すでに入国拒否が数件あり、あらためて『出入国管理および難民認定法』について調べてみた。入国拒否に関しては、犯罪といった前歴のある人物に適応される5条“上陸の拒否”と上陸条件の適合性を判断する7条“入国審査官の審査”によって決まる。2007年の理由別上陸拒否数によると、“入国目的に疑義のある”事案が7割以上で、“上陸拒否事由に該当する”事案は1割程度だった。多くのケースは、“入国目的に疑義がある”という7条の適応であり、5条ではない。つまり、入国の可否は入国審査官の自由裁量に左右されるのであり、基準が不明確である。このあたりをどうするかに、検討の余地があるのでは」と語った。
監視カメラと顔認識に関する報告をした吉村英二さん(日本消費者連盟)は、「東京都は、すでに設置されている街頭監視カメラへの顔認識技術導入を決め、この4月から研究開発に着手するという。顔認識カメラとは、テロリストや指名手配犯などの顔の特長を登録し、カメラに映った人物と照合するというシステム。監視カメラ設置の基準として、特定の人物を狙った監視カメラに撤去命令が下された『西成監視用カメラ撤去等請求事件大阪地裁判決』が用いられているが、監視カメラのシステムにあらかじめターゲットとなる人物の情報が登録されていたら、この判決との整合性はどうなるのか」と問題点を指摘。
「大きな国際イベントのたびに、『外国人が入国するから危ない』と監視を強めているが、なぜ危ないのかはよくわからない。いい加減そのような発想はやめるべきだ。監視カメラが犯罪の抑止にならないのは、このところの日本国内の犯罪事件からも明らかだ。だとしたら、何のための監視カメラなのか」と訴えた。
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