2008年04月28日17時22分掲載
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山は泣いている
28・先手必勝─過去の自然保護運動の反省 山川陽一
第7章 わたしたちの活動・3
勝負の世界では、いかに先手を取るかが重要である。いったん大きな流れができてしまったものをひっくり返すことは並大抵ではない。すでに大勢が決しまっては、手の打ちようもない。時に、起死回生の一手、逆転満塁ホームランなどということもあるが、大半は、労多くして結果がついてこない。
過去多くの自然保護の運動を見て感じるのは、推進側ですでに一定の構図が出来上がってしまってから、反対の名乗りを上げて紛糾しているケースがあまりに多いということである。特に相手が、国や地方自治体、あるいは大企業の場合は、計画が明らかになった事点では、すでに内部的に積み上げた一定のプロセスを経ているため、簡単に方向転換できない。ガードも固く、聞く耳も持たなくなってしまっていることが多い。
いきおい、対抗手段として、マスコミを利用して相手を悪者にしたてあげ、世論を味方につけて転換を迫るというお決まりのパターンになるのだが、こういう構図は前近代的でもある。そこに政党関係者が絡んできたりすると更にややこしくなる。
ひと昔前の大きな開発問題は、開発側も、外乱が入らないよう極力内密に事を運んで、根回しを済ませ、体制が出来上がった段階で公表して強引に推進しようというものが多かった。今日と比べると、世の中全体の環境に対する意識も格段に低く、情報公開の意識も低く、法的バックアップも不十分だったから、そんなことがまかり通った。今の時代に同じスタンスでことを進めれば、逆に命取りにもなりかねない。公明正大に情報公開して、議論を尽くしてから意思決定することが望まれる。
自然保護活動を行う側でも、アンテナをはりめぐらせて早く情報をキャッチし、問題を感じ取ったら、芽のうちに摘み取る努力を怠ってはならない。芽が出たばかりの段階なら、相手も聞く耳を持って対処できるのに、時宜を失すると、事が難しくなる。一方、早い段階で一歩を踏み出すということは、活動の先頭に立つことを意味するから、勇気がいる。内部的にも、説明努力が大変だ。組織人としての責任も大きい。いきおい、リスクを恐れて保守的になりがちであるが、冷静に判断して、腹を決めたら、タイミングを失しないで行動に移すことが大事である。
芽のうちに摘み取った活動などというものは、ほとんど大きな新聞沙汰にもならないから、世間から高く評価されることもないのだが、それでいいのだと思う。それこそが本当の自然保護につながる道である。(つづく)
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