2008年05月09日08時58分掲載
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オーストリア監禁事件 父が思いを吐露
オーストリアのアムシュテッテンの自宅地下に実の娘を24年間監禁して性的に虐待し、7人の子供まで産ませていた父ヨーゼフ・フリッチェルが、オーストリアの雑誌「ニューズ」に何故このような行動に出たかを語っている。長年に渡る虐待は先月26日、明るみに出て、世界中に衝撃を与えた。フリッチェルは現在 殺人罪とレイプ罪の疑いで刑務所に拘束されているが、弁護士を通じて思いを語った。英各紙などが報道した内容を紹介する。(ロンドン9日=小林恭子)
退職した電気技師ヨーゼフ・フリッチェル(73歳)は娘エリザベス(42歳)を地下に閉じ込め、子供を産ませた理由を、エリザベスが「すばらしい主婦で母親」であったために、彼女との間に家族を作ることを熱望したから、と説明した。エリザベスをレイプしたのは、自分自身の母親に対する近親相姦の欲望を投影したからと述べた。
「エリザベスにした行為を彼女が欲していなかったことは知っていた。傷つけたことも知っていた。しかし、禁断の実を食して見たいという欲望が強すぎた。中毒のようなものだ」。
エリザベスとの性行為時には避妊具を使っておらず、理由は「まっとうな家族」を作りたいと思ったからだ、と説明した。フリッチェルは地上の自宅に妻ローズマリー(68)と数人の子供による家庭を持ち、過去24年間2重生活を続けてきた。
「私はエリザベスとの間に子供が欲しかった。孫が生まれることを待ち望んでいた。私にとって、とてもすばらしい夢に思えた。まっとうな家庭を持てるのだから。地上ばかりでなく、地下にすばらしい妻と2−3人の子供たちが欲しくなった」
「たくさん子供が欲しいと常に思っていた。一人で成長してしまうような子供だけでなく、いつも一緒に遊べる子供が欲しかった。まだ自分が小さな頃から、大家族を持つのが夢だった」
地下室を建設したのはエリザベスとともに家族を作るのが目的で、「娘を『悪い人』たちから守りたかった」と述べている。しかし、エリザベスが警察に語っているように、彼女が11歳の時から性的虐待を犯していた点については否定している。「私は子供をもてあそんだりはしない」
「私はナチ時代に育ったが、厳しいしつけが非常に重要と見なされていた時代だった」、「抑制や権威に対する尊敬が必要だと考えられていた。私はこうした古い価値観を後年の生き方で実行していたのだろう。無意識にではあるが」
「エリザベスは思春期になると、規則に従わないようになった。バーで一晩過ごしたり、アルコールを飲んだり、タバコを吸うようになった。そんな悲劇的な状況からエリザベスを救いたかった」
「ウエイトレスの仕事を見つけてやったのに、働きに行かなくなった。家出も2回して、悪い人たちと一緒にいた。家に連れ戻したが、また出たがった」
「だから行動を起こさざるを得なくなった。力ずくでもエリザベスを外の世界から引き離せる場所を作るしかなかった」
エリザベスを地下室に連れ込んでから数ヶ月間、フリッチェルは娘に何もしなかったが、ある晩、「コントロールできなくなって」地下室でレイプした。「エリザベスとセックスしたいという欲望は強くなるばかりで、悪循環だった」
「毎週、状況は悪化していった。エリザベスを自由の身にするべきかどうか考えた。しかし、心を決めることができなかった」。
誰かが地下室で起きていることに気づき、犯罪を明るみに出すのではないかと恐れながらも、フリッチェルはエリザベスを解放するべきかどうかの決断を先延ばしにした。とうとう「解放し、エリザベスを地上に連れて行くには遅すぎる」と思うようになった。
フリッチェルは、母親マリアに対し近親相姦の欲望を持っていたことも明らかにした。父親は「悪いやつで、母を裏切っている」男性だった。第2次世界大戦後、母親の腕一つで育てられたフリッチェルはこうした欲望を何とか抑えていた。「とても厳しい母親だったが、最高の女性だった。私はある意味では母のボーイフレンドだった。家を仕切っていたのは母だったが、私は家の中の唯一の男性だったのだ」。
▽弁護士の作戦?
雑誌「ニューズ」をはじめとして、複数の媒体にフリッチェルの心情が紹介されたが、情報源は弁護士のルパート・メイヤー氏だ。氏はオーストリアの著名弁護士で、独雑誌「シュピーゲル・オンライン」英語版(2日付)で、「私の仕事はフリッチェルを一人の人間として見せること」と述べている。
フリッチェルは「家父長的な、良い面も悪い面もある人物だという印象を持った。感情的に壊れた人物だ」。
現在までに、メイヤー氏はフリッチェルが「精神的に尋常ではなかった」として、刑を軽減させる作戦のようだ。検察側は、「自分の娘を24年間地下に監禁できる人物は高いインテリジェンスとスキルを持つ人物に違いない」として、この説には同意しない見込みだ(「シュピーゲル」8日付)。
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