2008年06月10日13時19分掲載  無料記事
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マレーシアが燃料価格引き上げ前倒し実施 背景にアンワル元首相の影

 【クアラルンプール10日=和田等】マレーシア政府は5日にガソリンの価格を41%、ディーゼル燃料の価格を63%引き上げる大幅な価格引き上げを実施した。7月1日には電気・ガス料金の引き上げも実施することを決定した。マレーシアで前回燃料価格の引き上げが実施されたのは2006年2月で、1年以上引き上げを保留してきたが、あまりにも石油の国際価格の上昇ぶりが激しかったため、とうとうマレーシア政府もそれに対応して価格引き上げという手を打たざるをえなくなった。いずれも当初の政府の見解を翻した前倒しの値上げで、背景には「アンワル(元副首相)の影」を指摘する声もある。 
 
 
 国内価格を統括するシャリル・アブドゥル・サマド国内取引・消費者事務相はさきに、8月まで燃料価格の引き上げを実施しないと保証していたが、実際にはマレーシア政府は燃料価格の引き上げを前倒し実施し、約束を反故にした形になった。 
 
 この件について同相は、燃料費の価格を前倒しで引き上げたのは「後からの思いつき」ではなく、閣議やインフレ対策委員会で十分な討議を重ねた結果、石油の国際価格の急上昇により燃料価格の引き上げをそれまで待つ猶予がなくなったためと弁明した。 
 
 また引き上げ幅が大きかったことについて同相は、1回の引き上げ幅を小さくして何回も引き上げを実施するより、引き上げ幅を大きくすることで引き上げ実施を1回で済ませるのが妥当だと判断したため」と説明した。 
 
 燃料価格の引き上げを8月ではなく6月に実施した理由について、政治的な要因が絡んでいるという見方もある。もし8月に燃料価格の引き上げを実施するとなれば、総選挙から6カ月を経た後となるため、アンワルもと副首相の補選への立候補が可能になる。その場合、元副首相が補選に出馬し、政府による燃料価格引き上げを攻撃することは必至だからだ。 
 国民の反政府感情が高まり、元副首相率いる野党への支持も高まると予想される。 
 
 さらに元副首相の当選、国会議員復帰の勢いに乗じて、野党陣営が与党連合・国民戦線の議員を引き抜き、与野党逆転を実現、「アンワル首相」誕生というシナリオが実現する可能性もある。 
 
 アンワル元副首相は、今年4月、5年間の公職復帰禁止期間が終わっている。当初は補選に出馬して国会議員に返り咲くことを急がないと述べていたが、最近は、できるだけ早く補選に出馬したいとの考えを表明していた。 
 
 ますますマレーシアの政治が流動化する中、マレーシア政府は忍び寄る「アンワルの影」におびえ始めたとの見方も出始めている。 


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