2008年06月28日12時14分掲載
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G8
「慰安婦」は世界の性暴力被害者救済の原点 国際的な解決の動きに日本は逆行
北海道洞爺湖G8サミット期間中の7月9日、戦後責任などについて考える「市民がつくる和解と平和」国際シンポジウムが開催される。そのプレ企画として、渡辺美奈さん(WAM アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」事務局長)が「慰安婦」問題に関する講演を行い、「『慰安婦』問題は東アジアの平和を語るうえで重要な課題のひとつ。それだけでなく、世界中の性暴力被害者の女性たちが、この問題のゆくえを見守っている。昨年の米国下院本会議で「慰安婦」決議が採択されたのを追い風に、近い将来、なんらかの解決を見出したい」と語った。(木村嘉代子)
日本では、2000年の女性国際戦犯法廷以降、「慰安婦」問題がメディアで報道される機会がめっきり減った。しかし、「慰安婦」問題は終わってしまったわけではない。昨年、米国下院本会議で「慰安婦」被害者への謝罪を求める決議が採択されたのをきっかけに、国際的な動きが活発化している。
「慰安婦」問題は、東アジアのみならず、国際社会において重要な人権問題として扱われている。戦争に伴う性暴力が、あいかわらずつづいているからだ。旧ユーゴスラビアやルワンダ、ダルフールなどの紛争地にはレイプセンターが設置され、すさまじい強かんが行われていた。
「旧ユーゴスラビアはヨーロッパのほぼ真ん中に位置し、そこに住む女性たちは、まさか自分が性暴力の犠牲者になるなどとは思っていませんでした。21世紀を迎えようとしているこの時代に、なぜ女性が戦利品として扱われるのか。90年代の前半の女性運動は、この課題に向けて盛り上がりました」と渡辺さんは世界の状況を説明する。
「93年の国連世界人権会議では、旧ユーゴスラビアの性暴力被害者と、アジアの慰安婦被害者が証言し、国際的にかなり大きなインパクトを与えました。旧ユーゴスラビアの被害者たちが立ち上がったのは、多くの障害を乗り越えて闘っているアジアの慰安婦がいたからだといわれています。『慰安婦』問題は、性暴力を受けた女性たちの“救済の原点”になっているのです」
それを如実に表しているのが、「ラディカ・クマラスワミ 女性に対する暴力、その原因と結果に関する特別報告者の報告」の予備報告書(1995年)であると、渡辺さんはその一部を紹介。この報告書は、日本政府に対する「慰安婦」問題に関する国連勧告のひとつである。
「第二次世界大戦後約50年が経過した。しかし、この問題は、過去の問題ではなく、今日の問題とみなされるべきである。それは、武力紛争時の組織的強かんおよび性奴隷を犯した者の訴追のために、国際的レベルで法的先例を確立するであろう決定的な問題である。象徴的行為としての補償は、武力紛争時に犯された暴力の被害女性のために補償による救済への道を開くであろう」
性暴力の被害者は、「戦争だからしかたがない」と沈黙し、戦後も社会が安定して安全が確保されるまで声を上げることができない。自ら名乗り出るまでには、長い年月が必要とされる。
それゆえ、50年前の性暴力であっても被害者は救済される、という前例を作る意味でも、「慰安婦」問題の解決は期待されているそうだ。皮肉ではあるが、「慰安婦」問題は、戦争の性暴力の連鎖を断ち切るために、大きな貢献をしているといえる。
とはいうものの、「慰安婦」被害者たちはまだ権利を回復していない。
2007年7月30日の米国下院本会議での「慰安婦」決議採択は、他の国にも大きな影響を与え、オランダ議会下院、カナダ議会下院、欧州議会も、「慰安婦」決議を採択した。
米国下院本会議では、「慰安婦」被害者の声を聞く公聴会を開き、決議採択した各国の議会は、公式・非公式の違いはあるが、被害者の証言を聞く場を作ってきた。しかし、日本では、国会での公聴会も行われていない。
「国会で被害者の声を聞き、それを公式な記録として残していかなければ、次のステップを踏めないのではないかと実感しています。そこから変えていこうというのが大きな目標です。とにかく、被害者が生きている間に、ひとりでも多くの被害者の名誉と尊厳の回復を実現させたい。だからこそ、『慰安婦』問題が大きく動きはじめている今、再び忘れ去られてしまう前に、なんらかの解決に導きたいのです」と、渡辺さんは力をこめた。
最後に和解に触れ、「和解という言葉がここ1、2年テーマになっているなかで、使われ方にばらつきがあり、ひとつの意味ではなくなってきているのではないか。誰が語っているのかを非常に注意していきたいし、そうしなければ、間違った方向に流れていくのではないかと思います」と述べ、「慰安婦」被害者については、「和解の前にやるべきことがたくさんあります。被害者が求めている7項目(事実を認めること、真相究明、公式謝罪、法的賠償、責任者処罰、次世代への教育、追悼碑/資料館の建設)は、どれひとつ実現していません。まずは、被害者の要求を満たすことが急がれます」と主張した。
WAM アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」
http://www.wam-peace.org
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