2008年08月26日17時19分掲載
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山は泣いている
38・高度文明の行き着く先 クールビズで人類破滅は救えない 山川陽一
第9章 価値観を見直さないと・5
過去、人間は、地球の資源は無限であるという大前提の下に社会システムを構築してきた。しかし、近年の科学技術の長足の進歩と、それに伴う経済成長、世界人口の爆発的増加は、森林資源の急減と地下資源の枯渇をもたらし、地球資源が有限であることを浮き彫りにした。
森林資源について考えてみると、世界の原生林の80%がこの30年の間に伐採されて消えていった。これを復元するには千年の年月を要する。
地下資源はどうであろうか。もし、現在のペースで採掘が続くと仮定すると、石油の埋蔵量はあと33年、天然ガスは45年しかもたないと推定されている。30年前にもあと30年と言われた石油の推定埋蔵量は、探査技術と採掘技術の進歩で今なおその数字は変っていない、だから、これから先も安泰だという安易な説を唱える人もいるが、多少の延引はあっても枯渇は時間の問題であることに違いはない。億の歳月をかけて蓄積されてきたものが、再生産の見通しの無いまま、高々数百年間の人間の行為で掘り尽くされようとしている。
国連の生物多様性条約国際会議事務局の報告によると、地球規模での資源の需要は、地球が資源を再生産する能力をすでに20%超過しており、2000年までの30年間で、川や湖の生物は半減し、海や陸の生物は30%減少したという。その原因は、過大な開発とそれに伴う地球温暖化である。この延長線上にあるものは、人類自身の破滅以外のなにものでもない。
それにもかかわらず、地球資源の最大消費国であるアメリカは、京都議定書の批准を拒否し、自由経済による多消費型社会の構造を改める気配はないし、新興の中国やインドも、先進諸国のあとを追って成長路線をまい進している。
日本は、京都議定書を批准し、また、2010年に予定されている国連の第十回生物多様性国際会議の開催国として名乗り出てもいるが、会議の開催や条約の批准とは裏腹に、それに値する実際行動を伴っていないのは、悲しむべき事実である。
片や、発展途上国の人口の爆発は悲劇的で、国連の調査によれば、現在65億人の世界人口は2050年には90億人を超えると予想されている。世界人口の加速度的増加が始まったのは、人間が地下資源エネルギーを利用し始めた産業革命以降のことである。産業革命以前の世界人口は6億人であったから、わずか約300年の間に十倍になった。
いま、アメリカも、日本も、中国も、北朝鮮の核開発の愚を正すことに躍起であるが、実は、自らも環境面で人類滅亡の引き金を引きつつあることの愚に気付いていない。経済成長最優先で回ってきた近現代社会は、いずれ近い将来、神話が崩壊し、過ちが実証されるときが必ず来る。しかし、それを歴史が証明したときは、すでに手遅れである。
地球環境の問題は、クールビズなどというきれいごとで済むほど安易なものではない。為政者は、事態はもっと深刻なのだということを国民の前にさらけ出して、行動に移すときに来ている。
(つづく)
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