2008年09月01日01時06分掲載  無料記事
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ロシアへの対抗措置を打ち出せるか EUが緊急首脳会議

 グルジア紛争は、ロシアのメドベージェフ大統領が8月26日に、グルジアの南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を認める決定をし、ロシアと米国や欧州との緊張関係は、新たな局面を迎えた。1日には、ロシアの決定を受け、ブリュッセルで欧州連合(EU)緊急首脳会議が開かれるが、対ロシア政策で、必ずしも足並みがそろっていない欧州諸国が、一つのまとまった対抗措置を打ち出せるかどうかが焦点だ。ロシア側も、EUの緊急会議を目前に、ロシアのラブロフ外相が、ドイツのシュタインマイヤー外相と話し合い、グルジア紛争で生じた緊張激化を終わらせる必要性を指摘するなど、やや柔軟な姿勢もみせている。 
 
 ロシアでは、同国議会が25日、独立承認を求める声明を採択し、翌26日に、メドベージェフ大統領が、南オセチアとアブハジアの独立を認めたことで、欧米諸国は、一斉に反発を強めた。 
 
 北大西洋条約機構(NATO)のデ・ホープ・スケッフェル事務総長は26日、「この数週間のロシアの行為はコーカサスにおける平和と安定に対するロシアの態度に対する疑念を引き起こす」と警告。 
 
 フランスのクシュネル外相も同様に、ロシアは、グルジアからの独立を求めている両自治州を支配下に置こうとしていると批判した。ドイツのメルケル首相はロシアの決定は「決して容認できない」と述べ、グルジアの危機は「当該地域だけでなく世界政治全体を変化させるものである」と指摘した。 
 
 英国のミリバンド外相は27日に、ウクライナのユーシェンコ大統領と会談し、その後の演説で、ロシアは「欧州の地図を描きかえようとしている」と非難。さらに「我々は、冷戦が再現されることを望んでいない」と述べる一方、ロシアに対して「可能な限りもっとも幅広い連帯」の必要性を強調した。 
 
 グルジア問題は8月7日に、グルジアが親ロシアの南オセチア自治州に軍事侵攻したため、ロシアが軍事介入したのが発端。EUの議長国のフランスのサルコジ大統領の仲介で、ロシアとグルジアは停戦に合意した。 
 
 この間、ポーランドなど旧ソ連影響国の対ロシア警戒感が強まり、米国とポーランドは8月20日に、米ミサイル防衛(MD)システムのポーランドへの配備に関する協定に調印し、ロシアは強く反発した。また、グルジアへの人道物資搬送名目とはいえ、米艦船5隻が、ロシア艦艇が警戒する黒海に到着するなど、緊張が高まった。 
 
 しかし、グルジア情勢で、欧州諸国は、挑戦的な姿勢を強めるロシアに対して、必ずしも友好的な抵抗措置を打ち出せないでいるのが現状だ。効果的な手段とされる制裁措置に対しては、一部の旧ソ連支配下の東欧諸国を除き、フランス、ドイツなどは、制裁措置には消極的だ。 
 
 欧州主要国が、ロシアに対し柔軟姿勢を保とうとする背景には、新たな冷戦的状況を避けたいとの思惑もあるが、ロシアと欧州諸国との間で密接な経済関係があることが大きなことが挙げられる。 
 
 欧州はロシアからのガスと原油供給に依存している。欧州での経済不況に伴いEU市場での売上に影響する中で、自動車を初めとするさまざまなEU製品にとってのロシア市場は非常に重要である。 
 
 一方、ロシアにとっても欧州、とりわけドイツとの取引はますます重要性を増している。2008年上半期にロシアへのドイツ輸出は50%以上増大し、総額で290億ドルである。ロシアの孤立化は、経済的にみてもロシアの利益にならないことを、ロシア指導部も十分承知しているはずだ。 


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