2008年09月20日11時33分掲載  無料記事
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喜多幡佳秀のアジア&世界

米国 食肉加工工場での外国人労働者の搾取に抗議のデモ

  7月27日、アイオワ州ポストビルで、アグリプロセッサーズ社の食肉加工工場の奴隷的な労働条件に抗議するデモが行われ、ラビ(ユダヤ教の聖職者)、ヒスパニック系(ラテンアメリカ出身)の移住者、カトリック聖職者など約1千人が参加した。 
 
  アグリプロセッサーズ社はコーシャ肉(ユダヤ教の戒律に従って処理された食肉)加工の国内最大手企業であり、800人の従業員の半数以上はグアテマラ出身の労働者である。 
 
  この工場は5月12日に、移民税関執行局(ICE)の「不法移民取締り」に関連して強制捜索を受けた。ICEはこの捜索の中で、389人の移住労働者を検挙。その後、この工場の労働者の証言により、この工場で18歳未満の少年が20入以上働いていることが判明した。 
 
  「ニューヨーク・タイムズ」(7月27日付)ウェブ版は、次のように報じている。 
 
  ――最近になって、この若い移住労働者たちは調査官に対して、自分たちの仕事について話し始めている。ある労働者は、12時間交替制で働いていたと言う。鋭利なナイフを振りかぎして、処分したばかりの牛の肉を切り刻む仕事だ。危険な仕事なので、アイオワ州では食肉加工工場のこの部署で18歳未満の者を働かせることは禁止されている。 
  グアテマラ出身のエルマー・L君は、16歳のときにこの部署での仕事を始めた。彼は17時間交替制で、週6日間働いたと言う。彼は宣誓供述書の中で、「いつも疲れていた。働くことと寝ること以外に何もする時間がなかった。とても悲しかった。まるで奴隷のようだと感じていた」と述べている。 
  移民税関執行局(ICE)による捜索は、移住者に対する過酷な措置であり、雇用者に対する措置がほとんどないと批判された。 
 しかし、その後、拘留された労働者から多くの証言が得られた。彼ら・彼女らは調査官に対して、安全に間する訓練なしに働かされていたこと、長時間働かされ、休憩や超勤手当も与えられなかったことを語った。 
  アグリプロセッサーズ社は声明の中で、18歳未満の労働者を雇用していないと述べている。しかし、デモインで出入国関係の弁護活動を行っているソニア・バラス・コンラッドさんによると、これまでに、同社の食肉処理部門で27人の18歳未満の労働者が雇用されていたことが判明している。その大半はグアテマラ出身の、就労許可書を持たない労働者であり、その一部は5月の捜索で検挙を逃れた。 
  7月26日にポストビルで、議会ヒスパニック問題部会の会合が開かれ、3人の議員がアグリプロセッサーズ社の7人の移住労働者の証言を聞いた。このほか、「雇用機会平等委員会」は同社における女性労働者に対するセクシュアルハラスメントについての調査を行っている。出入国関連の弁護士たちは、連邦公正労働基準法への違反(賃金、労働条件)についての訴訟を準備している。―― 
 
  連邦検察官は主要には出入国管理法違反を問題にしているが、労働法違反についても調査しているようだ。5月12日の強制捜索のために裁判所に提出した令状請求では、出入国管理当局によってスパイとしてこの工場に送り込まれた匿名の移住労働者の証言が引用されている。 
 
  それによると、「1人の現場監督(ラビ)は労働者を侮蔑的な名前で呼んだり、肉を投げつけたりしていた」。この工場ではユダヤ人の管理者が、家畜の処分と食肉加工がコーシャ肉の基準に適合しているかどうかをチェックしている。また、ある工場長が1人の移住労働者をダクトテーーープ(配管用粘着テープ)で目隠しして、肉を吊るすためのフックで殴ったという事実も証言されている。 
 
  現時点で、検挙された労働者のうち297人が文書偽造や他の容疑で起訴され、大半が5ヵ月間の懲役を宣告されており、刑期が終った後、強制送還される。 
 
  エルマー・L君は、インタビューに答えて、「工場長には、僕が18歳未満であることを言った。工場ではいつも1日に17時間働いた。時給は7・25ドルで、残業手当はなかっ 
た。仕事はきつかったし、休憩がなかった。よく眠れなかった。不満を言ったら入管に連絡すると脅された」と語っている。 
 
  エルマー君によると、昨年8月26日に、彼が牛の内臓を取り出す作業をしているとき、ラビが大声を上げて、彼を後から蹴った。そのはずみでナイフが手から飛び出し、彼はひじを8針縫う大怪我をした。彼は病院から帰った後、痛みが続いているので休ませてほしいと言ったが、ラビは彼にすぐに仕事に戻るよう命じた。翌日、彼が牛の舌を持ち上げているときに傷口が裂け、出血したが、バンソウコウをもらっただけで仕事に戻された。 
 
  この事件はアグリプロセッサーズ社が同31日にアイオワ州労働局に提出した労災報告書にも記載されている。 
 
  ヒルダ・Oさん(16歳)は、夜のシフトで鶏の毛をむしる仕事をしていた。彼女は両親の借金返済を助けるために働いているという。 
 
  ホエル・Rくん(15歳)は、ポストビルの学校を8年目でやめて、アグリプロセッサーズ社で働き始めた。母親が病気になったためだ。彼は品質管理部で午後5時半から朝6時半まで働いた。彼によると、この仕事は比較的簡単であり、彼は英語を話すのでこの仕事に就くことができた。しかし、いつでも現場監督から、早くしろと怒鳴られている。ヒルダさんとホエル君は検挙を逃れた。 
 
  大部分の年少の移住労働者は釈放されたが、強制送還の手続き中である。 
 
  バラス・コンラッドさんは出入国管理当局に、4年間の特別一時ビザ(Uビザ、捜査に協力した移住者に与えられる)を発給するよう求めている。 
 
  全米食品商業労組(UFCWU)のマーク・ローリッツェン副委員長は、「(この問題は)無法な企業が破綻している出入国管理制度をいかに活用しているかを具体的に示している」と述べている。 


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